服部良一の親族とは
音楽界に知れ渡る、忍者のような「服部一族」についても記しておきます。
「服部」という苗字を持つ作曲家は、音楽の世界には何人もいて馴染みが深いのですが、服部の長男が服部克久、朝ドラ『ブギウギ』の音楽を担当しているのが孫の服部隆之、宝塚歌劇団を経て歌手・女優として活躍したのが服部の妹・富子です。以上が親族で、以下の服部さんたちは、すべて他人の関係です。
・服部竜太郎─作詞、英米民謡などの訳詞、評論家。
・服部正─オペラ「手古奈」「ラジオ体操第一」「慶應高校校歌」の作曲者。
・レイモンド服部─別名・服部逸郎。TBS系スポーツ番組冒頭で流れるマーチ「コバルトの空」作曲者。
・服部公一─「アイスクリームのうた」の作曲者。
映画に使われた服部ソング
次に服部作品と縁の深い映画との関係について見てみましょう。
服部良一と映画音楽との結びつきは深く、戦前の『丘は花ざかり』『蘇州夜曲』(『支那の夜』の挿入歌)から戦後の『青い山脈』まで、主題歌・挿入歌として数十曲に及ぶ佳曲を提供しています。
名曲『青い山脈』の旋律が浮かんだのが関西での省線列車の中、列車に揺られ六甲の山波を眺めているうちにメロディーが浮かんできた際、満員の中、譜面など書けないためハモニカの数字譜(略符記号)を手帳に書きつけて忘れないようにした、というエピソードは有名ですね。
市川崑の初期監督作品で、戦後の昭和24年に三十代半ばで撮った『果てしなき情熱』という新東宝作品があります。脚本は妻の和田夏十です。
歌謡映画でもなければ、服部の半生を描いたものでもありません。この時期までの服部の代表曲『雨のブルース』『蘇州夜曲』『湖畔の宿』『セコハン娘』『私のトランペット』『夜のプラットホーム』『ブギウギ娘』7曲が挿入歌として使われているのが売りになっています。
冒頭で淡谷のり子、山口淑子が歌うシーンがあり、準主役の笠置シヅ子は劇中で3曲歌っています。服部の妹、富子もキャバレーで歌うシーンがあります。これらの映像は貴重ではありますが、映画自体の出来が悪く、鑑賞中から陰鬱にさせる虚脱感は半端ではありません。YouTubeの有料で鑑賞できます。