相手に共感は求めるが、相手には共感しない(写真:アフロ)

(立花 志音:在韓ライター)

「お母さんってさ、『T』でしょう。あまり共感してくれないもんね」

 息子がいきなり聞いてきた。

「ええっ? そうなの? 確かに『T』が入ってるけど」

 ここ2年ほど、韓国ではMBTIという性格判断が大流行中で、インスタなどでは専門アカウントができるほど、皆が分析や解説に夢中になっている。

 内向型(I)か外向型(E)か、感覚型(S)か直観型(N)か、思考型(T)か感情型(F)か、判断型(J)か知覚型(P)か、を判断していく中で人の性格を16種類に分類分けする。

 その過程で様々な解説があり、息子が持ち出した話題は思考型(T)の人は共感しにくい人で感情型(F)の人は共感してくれる人だという話だ。筆者は自分のことを感情的な人間だと思っていたが、意外にも「思考型」に属する診断だった。

 息子がまだ中学生の時は「お母さんは僕に共感してくれない」といつも言っていた。確かに当時はお互いにやることなすこと、一挙手一投足が気に入らなくて、毎日衝突していた。

 いつか彼に「お母さんは僕のこと愛してないの」と言われた時は、本当にショックを受けたものだった。

 韓国語の「サランへ(愛する)」は男女の恋心よりも、博愛とか友愛、慈愛の愛に近いものもある。日本の母の日に子供が言うセリフは「お母さん、ありがとう」だけれど、韓国では「オンマアッパ、サランへ」という。「お父さんお母さん、愛してる」という意味で、韓国にあるのは「親の日」なので、このような言い方になる。

 その数日後に、また同じような話になった時、筆者は息子にこう言った。

「あなたの気持ちに添ってあげられなかったことは、申し訳なかったと思っている。でもね、ママはあなたが生まれてから今日まで、あなたの疑問にすべて答えてきたはず。日本のことも韓国のことも、数学の宿題も、一度でもママが知らないと答えたことがあった?」

 中三だった長男は、ぐるりと過去を振り返ったのだろう。「うん、ないね」と答えた。

「これはね、ママが頭が良かったからではないんだよ。ママも努力したんだよ。ごめんね。これがママの愛だから」

 この日を境に息子と筆者の信頼関係は、確固たるものになった。しかし、その代価として、息子は筆者を人間字引としてますます活用するようになった。

 特に日本語に対する質問は激しくなり、このぐらい辞書を引けと言いたくなるが、仕方がない。これが母親としての存在価値なのだから。いや、あくまで親の愛である。