RSVは何度か感染を繰り返すことで免疫を獲得し、免疫不全などの基礎疾患がなければ、現役世代で重症化することはない。だが、高齢者についてはこうした知見をあてはめられない。乳幼児と違い、この世代での感染の実態はあまりわかっていないからだ。

 高齢化が進む先進国で、昨冬の米国同様、少なからぬ高齢者がRSVで命を落としているのは確実なようだ。日本については、最近、グラクソ・スミスクラインの研究チームが感染状況を推計した。この推計によれば、毎年約6万2600人の高齢者が入院し、約4500人が亡くなっているという。

コロナ規制の解除が感染症の大流行を生む

 昨冬の米国のトリプルデミックを考えるにあたって注目すべきは、コロナ流行が始まるとインフルもRSVも流行様式が一変したことだ。RSVの場合、2020年には全く流行せず、2021年には夏場に再流行した。そして、昨冬の大流行となった。

 実は、この状況は日本も同じだ。2020年は流行せず、2021年は6~7月、2022年は7~8月、今年は5~6月に流行している。今冬、どうなるかはわからない。

 なぜこうなったのかについては、まだ結論が出ていないが、コロナパンデミック下での感染対策の強化や市民生活の抑制が、流行に歯止めをかけたことが考えられる。ただこの間、集団免疫は低下するため、社会活動を再開した段階で、様々な感染症が大流行するのではなかろうか。

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 現在、中国ではインフルエンザやマイコプラズマなど、複数の感染症が大流行していると報告されている。いずれも冬季に流行する呼吸器感染症だ。こうした流行の状況は、昨冬の米国に相通じるものがある。世界で最も早くコロナ規制を緩和した米国は、様々な感染症が再流行するのが早く、中国がその後を追っているのも頷ける。

 このあたり、英『ネイチャー』誌は冷静だ。11月27日に配信したニュースで、以下のように報じている。

「中国の子供たちの間で肺炎などの呼吸器疾患が急増しているのは、冬によく見られる感染症の結果であり、新たな病原体によるものではない。世界保健機関は、同国で急性呼吸器感染症が典型的な『冬の急増』に見舞われていると報告している。疫学者らは、コロナパンデミックが始まって以来、中国では規制が解除されて初めての冬であることを考慮すると、この急増は予想されると述べている」

高齢化国・日本に必要な対策

 昨冬の米国、今冬の中国のような事態が世界各地で起こっても不思議ではない。世界各地で対策が進んでいる。

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