今月11日、岸田首相は都庁の新型コロナウイルスワクチン大規模接種会場で、7回目のワクチンを接種した。このワクチンはオミクロン株派生型.「XBB.1.5」に対応したもので、9月から一般にも接種が始まっている。
コロナは「パンデミック(世界的流行)」から「エンデミック(一定の周期で繰り返される流行)」に移行したと考えていいのか。日本政府はこれまで、正しくコロナ政策を打ち出すことができたのか。コロナ禍に集めた様々なデータを突き合わせると何が分かるのか。『全検証 コロナ政策』(角川新書)を上梓した弁護士の明石順平氏に聞いた。(聞き手:長野光、ビデオジャーナリスト)
──新型コロナウイルスに関して、様々なデータを収集して、独自のグラフを作り、ウイルスの感染状況や、政府の対応の効果などを分析されています。明石さんの本職は弁護士ですが、なぜ本書をお書きになったのでしょうか?
明石順平氏(以下、明石):私は医療従事者ではないので、KADOKAWAさんからこの本のご提案をいただいた時に、正直少し「無茶振りだな」とも思いましたが、そんな自分だからこそ持つことができる視点もあるのではないかと考えました。統計データから言えることを客観的に分析してみたら、意外な発見もあるかもしれないと考えたのです。
──日本国内の新型コロナウイルスの感染者数は、2020年が23万4109人、2021年が149万2874人、これが2022年になると一気に数が増え、2722万6973人になっています。2020年から比較して、2022年は116.3倍に感染者数が増えたという事実について書かれています。
明石:私自身もデータを見て驚愕しました。これはオミクロン株の登場による状況の変化です。オミクロンはそれ以前とは比較にならないほど感染力が強い。日本人が最初にコロナのワクチンを打ち始めた頃は、まだアルファ株やデルタ株でした。2021年の11月頃に、かなりの方がワクチンの接種を2回終え、この段階で、感染者数がいったんはとても減りました。
「これはワクチンの効果が出たな」と思った直後に、突然に感染者数がそれまでにない規模で跳ね上がりました。ワクチンは、感染予防という意味では、オミクロンにはあまり効き目がなかったということです。
アルファやデルタとオミクロンは完全に別物であり、感染力においてはリトルリーグとメジャーリーグほどの違いがあります。ノーマスクが普通になってきましたが、実際はそこら中で学級閉鎖や学校閉鎖が起きている。しかし、この危機感はあまり共有されていません。
2022年の夏に強烈な第七波がきましたが、「行動制限のない初めての夏」と言われ、コロナが終わったかのような報道が盛んに行われました。実は、この時に感染者数はピークだったのです。しかも、この段階ではまだ、全数把握の調査をやっていたし、メディアにも取り上げられていました。異常が毎日続いて日常になってしまったのだと思います。
【参考記事】
◎尾身茂が告白、コロナ分科会の悪戦苦闘があぶり出す医療制度の時代遅れ(JBpress)
──新型コロナウイルスによる死亡者数を比較すると、2020年が2846人、2021年が1万4926人、2022年が3万8881人と、数は年々増えていますが、新型コロナウイルスの致死率は、2020年が1.22%、2021年が1.0%、2022年が0.14%と下がっています。これはつまり、感染者の増大に従って死者数は増えているものの、感染対策の影響で感染して亡くなる人の割合は減っていったということでしょうか?