初の公開討論会が開催された共和党のデサンティス(フロリダ州知事=左)氏と民主党のニューサム(カリフォルニア州知事)氏。2023年9月撮影、写真:AP/アフロ

9月16日の討論会開催だけは決まったが

 2024年米大統領選に向けた民主、共和両党大統領候補によるテレビ討論会が2024年9月16日(テキサス州)、10月1日(バージニア州)、同9日(ユタ州)の3回行われることが決まった。

 民主、共和両党が1987年に設立した大統領候補による討論会を主催する非営利団体「大統領候補討論会委員会」(Commission on Presidential Debates=CPD)が11月20日に正式発表した。

 両党が大統領候補を指名する全国党大会は、共和党は7月、民主党は8月に開かれ、そこで党候補が正式に選出される。

 今のまま政治状況が移行すれば、民主党はジョー・バイデン大統領(81)、共和党はドナルド・トランプ前大統領(77)によって行われることになる。

 それまで両者がテレビ討論会で相まみえることはない。

 だが、この討論会日程はあくまでも「紙に書いたシナリオ」。両者に万一のことがあれば、破り捨てられる。「虚構の現実」に過ぎない。

 バイデン、トランプ両氏ともに、米国民の60%から70%にとっては「なってほしくない大統領候補」だ。

 にもかかわらず、トランプ氏は共和党の指名候補レースでは他の候補を抑え、61%の支持を得てトップを走っている。世論調査では本選挙で現職バイデン氏を凌いでいる。

 トランプ氏も4つの刑事・民事罰裁判を抱え、出廷の合間を縫って全米各地で選挙運動を繰り広げている。

 判決は2024年の大統領選以後になるため、憲法上は刑事被告であっても刑が確定せず大統領選に立候補できる。

 一方、バイデン氏の高齢問題に対し、米国民の77%が懸念を示し、バイデン再選には反対している。

 それにもかかわらず、ご本人は再選に意欲満々。

 11月30日には、地元のデラウェア州ウェリントンに選挙キャンペーンの司令塔を設置、再選に向けた動きを本格化している。

 今再選を目指さないと言えば、その日からレイムダックになり、政権運営はより難しくなるという「高等戦略」とも受け取れる。

 ただ民主党内には「相手がトランプなら勝てるが、トランプ以外の候補が出てくれば、負けるかもしれない」(同党カリフォルニア州支部幹部)といった声が出ている。

 逆に共和党内にも「相手がバイデンならトランプ以外を候補に立てれば政権を奪還できる」(フロリダ州支部幹部)といった見方が出ている。

 両党ともに「虚構の現実」がまだまかり通っている中で水面下ではマグマが疼いていた。