一族企業の不正問題でニューヨーク州の裁判所に出廷したドナルド・トランプ前大統領(11月6日、写真:ロイター/アフロ)

裁判長の質問には一切答えず

 ドナルド・トランプ前米大統領と息子らが不動産価値を不正に操作したとしてニューヨーク州当局から提訴された民事訴訟で、トランプ氏が11月6日、同州地裁(アーサー・エンゴロン判事)に出廷、証言台に立った。

 トランプ氏は裁判長の尋問には一切答えず、裁判長や自分を起訴したレティシア・ジェームズ州司法長官らを3時間半にわたりこき下ろした。

「あんたはひどいことをしでかした。あんたは私について何も知らない。そこにいる『雇われ政治屋』(This political hack=トランプ氏を起訴したジェームズ州司法長官)の言うことだけを信じている」

「不正行為を行っているのは私ではなく、この法廷だ」

「この裁判は政治的動機に基づいた魔女狩りだ。裁判長であるあんたはいつものように私に不利な判断を下すだろう

 さすがに頭にきたエンゴロン裁判長は「質問に答えないのであれば、証言席から立ち去ってもらう可能性もある」と警告したうえ、「ここは法廷だ。政治集会の場ではない」と声を荒らげた。

 そしてトランプ氏の弁護士たちを睨みつけ、質問に簡潔に答えるようトランプ氏を監督するよう促した。

 この法廷ドラマの一部始終を目撃した高級誌「ジ・アトランティック」のキムベリー・ウィル氏は、こう嘆いた。

「かつて大統領であり、再び大統領の座を狙う人物の挙措は、法治国家である我が国の法と秩序、司法制度の神聖さをぶち壊す嘆かわしいスペクタクル(見世物)だった」

theatlantic/trump-ny-civil-fraud-trial-testimony

 また、ワシントン・ポストのコラムニスト、ルース・マーカス氏は、こう書いている。

「トランプ氏は大統領再選を狙うだけではなく、リベンジ(報復)を狙っていることがこれではっきりした」

washingtonpost/trump-revenge-polls-biden