バイデン米政権の対中規制強化の影響で、米エヌビディア(NVIDIA)のAI(人工知能)向け半導体の、50億ドル(約7500億円)超に上る受注が取り消しを余儀なくされる可能性がある。米ウォール・ストリート・ジャーナルが報じた。これにより、中国のテクノロジー大手も重要なAI資源を失うリスクに直面するという。
エヌビディア、中国向け事前出荷が不可能に
関係者らによれば、エヌビディアは中国向けの高度AI半導体について、2023年の受注分をすでに出荷し終えている。そして、23年11月中旬に新規制が発効する前に、24年向け受注分の一部を急ぎで出荷する予定だった。
しかし、米政府はこのほどエヌビディアに対し、新たな輸出規制を即時発効させると通知した。これにより、同社が準備していた中国向け事前出荷は不可能になった。
これに先立つ23年10月17日、バイデン政権は中国などに対する米国製先端半導体の輸出規制を拡大すると発表した。ロイター通信によれば、この新規制は当初、10月17日から30日後に発効される予定だった。だが、当局はこれを10月23日に前倒しした。
ウォール・ストリート・ジャーナルによれば、中国のアリババ集団や、TikTokの親会社である北京字節跳動科技(バイトダンス)、百度(バイドゥ)といったAI・クラウドコンピューティング大手は、24年の半導体調達分として、すでにエヌビディアに大量発注していた。関係者によると、これら大手を含めた24年の中国企業からの受注額は50億ドルを超えていた。
これについて、エヌビディアの広報担当者は、「当社の画像処理半導体(GPU)を使用した先端AIコンピューティングシステムを、米国やその他の地域の顧客に割り当てるよう取り組んでいる」と述べた。「新しい供給先の開拓も進めている」とし、この新規制が近い将来の業績に及ぼす影響は軽微だと説明した。
ただ、エヌビディアのコレット・クレスCFO(最高財務責任者)は23年6月、米国の半導体対中規制について、「米国産業の競争機会を永久に奪うことになる」とし、「当社の将来の事業と業績への影響は避けられない」と述べていた。