イタリア領最南端のランペドゥーザ島を訪問したフォンデアライエン欧州委員長と、イタリアのメローニ首相。メローニ首相の眼光が鋭い(写真:ロイター/アフロ)
  • 2015年以来となる不法移民の急増に直面している欧州。イタリア領最南端のランペドゥーザ島には、人口をはるかに上回る不法移民が押し寄せているという。
  • 事態を重く見たフォンデアライエン欧州委員長はイタリアへの支援を発表。不法移民の送還や取り締まり強化に取り組むと表明した。
  • 対外的には自由で開かれた世界の重要性を説きつつ、その実は内向き志向を強める。それが今の欧州連合(EU)とヨーロッパの矛盾した実情だ。

​(土田 陽介:三菱UFJリサーチ&コンサルティング・副主任研究員)

 ヨーロッパは2015年、未曾有の移民・難民危機に直面した。それ以来となる不法移民の急増に、今夏のヨーロッパは直面している。

 特にイタリアには、北アフリカから地中海を渡って多くの不法移民が押し寄せており、欧州連合(EU)の政策専門サイトであるユーラクティブによれば、その数は12.6万人と、昨年比で倍増しているようだ。

 不法移民が押し寄せるのは、地中海のシチリア島南方にあるイタリア領最南端の島、ランペドゥーザ島である。人口がわずか5500人ほどのこの島に、1週間でその人口を上回る不法移民がやってきている。

 またイタリアの報道によれば、9月16日の土曜日だけで1000人を超える不法移民が、ランペドゥーザ島にボートで来たという。

 ランペドゥーザ島の不法移民収容施設の定員は400人まで。その処理能力をはるかに超える不法移民が押し寄せる状況である。

 航海中の転覆事故で亡くなる不法移民の数も多くなっており、事態は緊迫化している。収容施設の拡張も計画されているようだが、当然、ランペドゥーザ島の住民のほとんどがそれに反対している。

不法移民を乗せた船。小さな船は今にも沈みそう(写真:AP/アフロ)

 こうした状況を受けて、9月17日にイタリアのジョルジャ・メローニ首相とランペドゥーザ島を視察した欧州連合(EU)のウルズラ・フォンデアライエン欧州委員長は、イタリアに対して支援を行うと発表した。EUはイタリアと協力し、不法移民の送還や取り締まりの強化に取り組むということだ。

 さらに、イタリアの隣国であるフランスのエマニュエル・マクロン大統領も、イタリアに協力を惜しまない旨を発表した。

 近くジェラルド・ダルマナン内相がイタリアを訪問するとともに、ドイツとEUを交えて4者で不法移民対応のための会談を設ける模様だ。EU現執行部は今、再度の移民・難民危機に対する危機感を急速に高めている。