(英エコノミスト誌 2023年9月16日号)
極右を悪者扱いする策は奏功していない。
欧州が亡霊にとりつかれている。台頭する極右の亡霊だ。
ドイツでは、露骨に外国人嫌いの「ドイツのための選択肢(AfD)」が急激に支持を伸ばし、2番目に人気が高い政党になった。
同党の成功は国内政治を二極化させ、来年のドイツ東部の州議会選挙で勝利を収めそうな勢いを見せている。
ポーランドでは、総選挙を10月15日に控えて与党「法と正義」が世論調査でリードしており、過激な新党「コンフェデレーション」に引っ張られて一段と右傾化している。
ルペン大統領が誕生する可能性も
本誌エコノミストが今週号の特集で説明しているように、今後さらに暗いニュースが続く恐れがある。
来年には、6月に実施される欧州議会選挙で極右が勢力を伸ばす可能性がある。2027年のフランス大統領選挙では、極右政党「国民連合(RN)」を率いるマリーヌ・ルペン氏が勝利を収めるかもしれない。
もしルペン氏が勝てば、フランスは極右によって統治される2番目の大国になる。
先行したのは、ジョルジャ・メローニ氏と同氏率いる「イタリアの同胞」が昨年、排外主義の「同盟」との連立で政権を握ったイタリアだ。
誤解してはならない。欧州は何も、1930年代の再現でファシストに席巻されようとしているわけではない。
だが、新たな右翼の波は大きな課題を突きつける。
下手に扱えば、政治を毒で汚し、有権者のかなりの部分から権利を奪い、欧州連合(EU)の重大な改革を阻止する恐れがある。
これに対する最善の対応は、極右政党を政府と公の議論から完全に排除しようとするのではなく、主流派の政党がこうした党と関与し、時として取引することだ。
実際の国の統治について一定の責任を負わなければならないとすれば、極右政党が多少過激さを和らげるかもしれないからだ。