以前は携帯電話を買うと、最初からいろいろなアプリや機能が入っていて、当初は無料だが、中止の手続きをしないと、いつのまにか有料になる、ということがあったらしい。しかしそのアプリや機能を中止するのがやたらめんどうで、これが問題になった。

 いまでは改善されているようだが、金を儲けるためにはまたいじましくも、薄汚いことを考えるものである。

 ケーブルテレビのJCOMを通してテレビとインターネットを使っているからか、毎月無料で「ジェイコムマガジン」というものが送られてきていた。ところがこれを、不要の手続きをしないと今後月200円を請求します、と連絡がきて、めんどうだが手続きをした。

 こんなもの別にいらない。しかしこれも「手続きがめんどうだな。200円くらいいいか」と年寄りが放置してくれることを期待したやり口だと思われる。

「わかっていても焦るぞ」

 わたしのところにはまだ、オレオレ詐欺の電話がかかってきたことがない。しかし数年前、わたしの兄のところにかかってきた。実際にかかってくると、アレだな、とわかっていても「焦るぞ」といっていた。そうかもしれないと思う。

 オレオレ詐欺にかかった老人のなかには、おかしいと思っても、いきなり電話を切ることができなかったり、あんた詐欺だろ、と強い言葉でいうことができず、ずるずると相手のいうことに従ってしまった、という人がいるのではないだろうか。

 というのも、これだけ毎年被害が報告されているのに、あまりにもたやすく詐欺にかかりすぎ、耄碌するにもほどがある、という感じがするのだ。

 おかしいと思えば、いきなり電話を切ったり、詐欺だろとはっきり言葉を投げつければいいと思う。けれどそうするためには、それなりに心の準備がいるものである。

 とくにそういうことに慣れない高齢女性の場合、相手が丁寧に話をしているのにいきなり電話を切ったりするのは失礼にあたる、という心理があるのではないか。

 そんなバカなことがあるか、何百万円も盗られようとしている詐欺相手に、電話を切ったら相手に失礼なんて思うわけがないといわれるだろう。じつはわたしも、そう思う。

 しかし人間は、ときと場合によっては、理屈に合わないことをしてしまうものである。そして、いくつになっても自尊心はあるから、わたしは騙されているわけではないと、自分で自分を騙したりするものである。