
昭和4年(1929年)までは、上野・浅草間に初の地下鉄開通、交響楽団の結成、ターミナルデパートの開店、フルーツパーラーの開店、また、カレー粉・ミルクチョコレートなども次々に発売され、モダンボーイ・モダンガールが流行。全体としては国民の笑顔が目に浮かぶような時代だ。もちろん深刻な生活の格差はあったのだが。
あっという間に世論の戦争ムード一色に
昭和5年(1930年)前年の世界恐慌が日本にも波及し不況が深刻化し「ルンペン」(失業者、浮浪者)という言葉が流行、共産党員全国一斉検挙。昭和6年(1931年)満州事変勃発。昭和7年(1932年)五・一五事件、満州国建国。昭和8年(1933年)国際連盟から脱退――と世の中は次第にきな臭くなってくるが、まだ国民生活はのんびりしていたようだ。のちの東京国際空港の開港、小型自動車の生産開始、国産電気掃除機の登場、と庶民の手の届くものではないにしろ、夢のある時代だ。
昭和12年(1937年)の日中戦争勃発、昭和13年(1938年)の国家総動員法公布あたりからは流行語が「挙国一致」「国民総動員」と軍国調になり、千人針や慰問袋、そして神風ブームが起こる。昭和14年(1939年)第二次世界大戦勃発、国民徴用令公布。昭和15年(1940年)日独伊三国軍事同盟成立、敵性語禁止、生活必需品の配給制開始。ちなみに敵性語とは、戦火を交えているアメリカやイギリスの言葉、つまりは英語のことだ。そのため例えば野球で言えば、球審はストライクのことを「よし」、ボールのことを「ダメ」とコールしていたという。
