ウクライナ軍が6月初旬に反転攻勢を開始して以来、多くの西側主流メディアや相当数の軍事専門家は「ウクライナ軍の反攻作戦は遅い。失敗しているのではないか」と主張している。
しかし、彼らの主張は的を射ていない。
ピューリッツァー賞を2度受賞した元戦争特派員のトーマス・リックス氏は次のように主張している。
「戦闘の取材は危険だが、比較的簡単だ。見聞きしたことを書き留めるだけでいい。しかし、戦争を正確に取材するのははるかに難しい」
「戦略、兵站、士気など、しばしば観察することができないものをある程度理解する必要があるからだ」
また、セント・アンドリュース大学のフィリップス・オブライエン教授も同じようなことを主張している。
オブライエン教授は、ロシア・ウクライナ戦争の開始から現在に至る戦況を的確に指摘し続けている戦略研究の大家だ。彼はフォーリン・アフェアーズ誌に以下のように書いている。
「ウクライナ侵攻は、国家が大規模な敵対勢力を打ち負かすには、優れた兵站と強力な経済力が必要であることを明らかにした。しかし、大規模な戦争に勝つためには、この2つの要素だけでは十分ではない」
「国家はまた、モチベーションが高く、よく訓練された兵士で構成された軍隊も必要とする。そして、ウクライナの軍隊は、敵であるロシアよりもはるかに決断力があり、熟練していることを繰り返し証明してきた」
リックス氏やオブライエン教授の適切な指摘は、「ウクライナ軍の反攻作戦は遅い」としか言わない論者への批判にもなっている。