7月31日のスペイン戦におけるなでしこジャパンのスタメン(写真:アフロ)

 2023年7月31日はなでしこジャパンにとって記念すべき日となった。もちろん強豪相手であったスペインに4-0で大勝し、グループリーグ首位突破を決めた日だからである。なでしこはCグループにおいて3連勝、失点は0という素晴らしい結果を収めた。

 しかし、である。人間は都合の悪い記憶を忘れてしまうご都合主義の動物だ。わずか2年前の21年7月30日、日本で何が起きたのかを覚えているだろうか。東京五輪に出場したなでしこジャパンがスウェーデンに3-1で敗戦、メダル獲得が最重要課題の自国開催五輪でベスト8に終わった試合があった日だ。

 この敗戦により、5年4カ月にもわたって指揮をとってきた高倉麻子監督は監督の座を降り、高倉体制は終わることになった。一説には解任同然だったという。そして、この年の10月1日から監督が池田太に代わった。

 もう一度書くが、それがわずか2年後――今、なでしこジャパンは快進撃を続けている。この間、なでしこはどのように生まれ変わったのか。高倉麻子と池田太という2人の指揮官にスポットライトを当てて比較研究をしてみた。

なでしこ低迷期にスタートした高倉体制

 振り返れば高倉麻子体制が誕生した時、なでしこは大きな低迷期にあった。

 2011年W杯ドイツ大会での優勝を皮切りに、12年ロンドン五輪銀メダル、15年W杯カナダ大会で準優勝と、好成績をあげてきた佐々木則夫体制下のなでしこだったが、選手の世代交代がうまく進まず、次第にメンバーがベテラン化していった。そして16年のリオ五輪への出場権をかけたアジア最終予選――。FIFAランキング4位の日本はまさかの敗退。五輪出場を逃し、佐々木監督もこれを機に退任した。

 そんな低迷期にあった時期に佐々木の後任に指名されたのが高倉監督だった。厳しい状況での船出だったのは間違いない。