2023年になって、ゲーム動画を投稿する「靠脸吃饭的徐大王」(チャンネル登録者数400万人)、映画などを紹介する「看电影了没」(登録者数100万人)といった人気クリエイターが、相次いでチャンネル更新停止を宣言しています。

 ほかにもグルメ、歴史、旅行、経済分析など幅広い分野で、実質的に更新が停止しているチャンネルが多く見受けられます。大手メディアは「クリエイター離れ(停更潮)」として取り上げています(「百亿激励留不住? 有UP主称收入降逾三成! B站UP主停更潮虚实」)。

「B站UP主停更潮」で検索すると多くのページがヒットする

 大きな要因が、収益性の低下です。

 現在の人気クリエイターは、コンテンツ作成のために多くのスタッフを抱えています。筆者の知人であるクリエイター(登録者数50万人)は常時3人のスタッフを抱えているほか、撮影のための旅費などを考えると1カ月あたり4万~5万元(約80万~100万円)の経費が掛かることもあるそうです。

 一方クリエイターの収入は、動画再生数に応じたbilibiliから支払いと、クリエイターを支援する企業のスポンサー収入です。この点では、YouTubeと同様ですが、大きな違いはbilibili動画に広告がほとんど入らないことです。

クリエイターも運営会社も苦しい

 人気ユーチューバーの場合、動画再生数1万回あたり3400円程度の収入があるようです(ユーチューバープロダクションUUUMの通期決算説明資料 2023年5月期の数値を参考に筆者算出)。

 一方のbilibili動画ですが、イベント会場bilibili Worldでお話を聞いたクリエイターによると、以前は動画再生数1万回あたり20元程度(約400円)だったのが、現在(2023年7月)では2~3元(約40~60円)程度まで落ち込んでいるそうです。

 もう一つのスポンサー収入も厳しさを増しています。

 2023年現在、bilibili動画で収入を得ているクリエイターの数は、昨年同期比で50%以上増加し、150万人超となりました。近年の就職難から、参入障壁が低い動画クリエイターに集中したのかもしれません。これだけの人数がいるなかで、スポンサーとなる企業を獲得する難しさは容易に想像できるでしょう。

 bilibiliを運営する会社も苦しんでいます。2023年第1四半期の損失は約6.3億元(約120億円)。赤字がずっと続いていて、しかも赤字額が年々増加しています。

bilibil運営会社の利益(筆者が財務報告書を基に作成)

 bilibiliの主な売り上げは有料会員の会費とスポンサーからの広告収入で、どちらも毎年20%前後増加しています。ところが、それ以上に運営費が増加しているため、結果的に赤字も拡大しているということです。これも、クリエイターへの支払いが減少している要因になっています。