(英エコノミスト誌 2023年7月15日号)

米国は専制大統領の暴走を止められない国になるかもしれない

「MAGA(米国を再び偉大に)」を信奉する共和党員は、トランプ政権の最初の4年間の混乱といら立ちを払拭する方法が分かっていると考えている。

 ドナルド・トランプ大統領の時代で圧倒的に記憶に残っているのは、混乱と憤りのそれだ。

 大統領の任期を実に恥ずかしい振る舞いで終えたこと、すなわち権力の座にとどまるために支持者をけしかけ、連邦議会議事堂を襲撃させた一件はその好例だ。

 トランプ氏はあれ以来、選挙後の不名誉な弾劾から2件の刑事訴追へと迷走している。起訴の件数はこれからさらに増えるかもしれない。

 前大統領は2020年の選挙での敗北を再び訴訟に持ち込みたがっているようだ。

「私があなたの正義だ」

 トランプ氏は今年、多数の支持者に向かってそう叫んだ。

「私があなたの報復者だ」

1期目のカオスは繰り返さない

 2024年米大統領選挙の共和党候補者指名争いは、トランプ氏が勝つことになりそうだ。本選挙でも勝利すれば、さらなるカオスが訪れると考える読者もいるかもしれない。

 衝動的なボスを当初押しとどめた大人が今回はいないからだ。

 だが実は、米国第一主義を掲げるポピュリストのプロ集団が献身的に動き、2期目のトランプ政権が規律の取れた、政策の実行に注力する政権になるように準備している。

 彼らはお膳立てを進めており、その取り組みを見過ごしてはならない。

 本誌エコノミストの最新号の特集記事にあるように、2016年にホワイトハウスを手に入れた杜撰な反乱とは対照的に、第1次トランプ政権にいたベテラン閣僚や高官はもう何年も準備に取り組んでいる。