2023年に始まった習近平政権3期目に台湾有事のリスクが高まるとみられることから、前回記事を含めこれまでに、日本はシーレーン喪失に備えてエネルギー備蓄を強化するなど、継戦能力の構築が必要だと指摘してきた。今回は、台湾有事における食料備蓄と、産業のコメと呼ばれる半導体供給について深掘りし、台湾有事を抑止するために必要な日本の備えとは何かを論じる。
◎前回記事『台湾有事を抑止するエネルギー政策とは?日本の備えはこれで大丈夫なのか』を読む
(杉山大志:キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)
私たちは毎日2〜3kgの石油を「食べている」
日本の一次エネルギー消費は、全てのエネルギーを石油に換算すると年間約4億トンに上る。これは1人あたりだと年間3トンとなる。1日あたりにすれば1人10キログラムで、日本人は毎日これだけの石油を消費している勘定になる。
このうち、2割から3割程度が食料供給のために使われているとみられ、毎日2キログラムないし3キログラムの石油を「食べている」ことになる。
だが実際の1人あたりの摂取熱量は2000キロカロリー前後で、これを石油に換算すると200グラムぐらいにしかならない(ということは、脂身だらけの200グラムのステーキを食べたら、それで1日分のカロリーになる!)。つまり我々は実際に摂取する熱量の10倍以上ものエネルギーを石油などの形で消費している。
なぜこんなに食料供給にエネルギーを消費するかというと、農作物をつくるための肥料・農薬の生産に始まり、農業機械を動かし、トラックで輸送し、食品加工をし、冷蔵・冷凍を行う、といった具合に、あらゆる場面でエネルギーを使うからだ。
前回の記事『台湾有事を抑止するエネルギー政策とは?日本の備えはこれで大丈夫なのか』で述べたように、台湾有事が起きて日本のシーレーンが危機にさらされると、エネルギー供給の途絶が危惧される。それに対する備えが必要なこともすでに書いた通りだが、備えをしても大幅なエネルギー供給の減少は避けられないかもしれない。
そのような状況になっても、飢え死にすることなく、1年ぐらいは生き延びるようにする必要がある。いざというとき、普段我々が享受している「エネルギー多消費型の食料供給」は全く機能しなくなることを覚悟しなければならないのだ。
ではどうすればよいか。