- 日本株が大幅高となったことで、大量のETF(指数連動型投資信託)を保有する日本銀行の動向に関心が高まっている。
- 仮に、日銀の長期金利コントロールや資産買入に転換があれば、株価の下落要因になるとの見方も。
- 日銀は、株価下落を誘発しかねない低金利政策の変更や、ETFの売却に転じることは当面難しいのではないか。
(平山 賢一:東京海上アセットマネジメント チーフストラテジスト)
配当込みではすでに史上最高値を更新済み
2023年4月以降、わが国の株価指数が際立って上昇したため、日本株式に対するグローバル投資家の注目が集まっている。
その背景には、著名投資家である米ウォーレン・バフェット氏らの日本株購入報道や、東京証券取引所によるPBR(株価純資産倍率)1倍割れ企業への対策要請などが影響したとの見方もある。さらに一部には、他の地域の株価指数が大幅に上昇する中で、日本株のみ1989年12月の史上最高値を30年超にわたり更新していないことも材料視されている。
ただし、配当込みの株価指数は、すでに2021年1月に高値を更新していることから、史上最高値更新への挑戦という材料を基に、現在の株高を騒ぐ必要は実はそれほど大きくない。長期で株価指数に連動する運用をしていれば、株式投資成果は新たな高みを目指すステージにすでに突入していたからだ。
そのため、株式投資の成果という観点からは、「失われた数十年」という表現は終了しており、新たなる定常状態を日本株式は目指していると言ってよいだろう。
また、2023年6月現在の日本株式の上昇は、一部の大型株や、半導体・ITなどの流動性の高い銘柄が主役であり、本格的に腰の入った日本株になっていないとの指摘もある。