昨年8月10日、記者会見した世界平和統一家庭連合(旧統一教会)の田中富広会長(左)と山田達也法務局長(写真:AP/アフロ)

(作家・ジャーナリスト:青沼 陽一郎)

 岸田文雄首相は、統一教会(現・世界平和統一家庭連合)を解散させるつもりはないようだ。むしろ、宗教法人としての存続に“お墨付き”を与えたいらしい。

 昨年10月に、解散命令請求を前提とした「質問権」の行使を表明。指示を受けた文部科学省は、統一教会にこれまでに6回もの質問権を行使して延べ500項目以上の質問を送り、今月12日には教団から6回目の回答を得たにもかかわらず、いまだに裁判所への解散命令の請求の目処すら立っていないからだ。教団の粗探しも、解散命令に至るものが見つからなければ、そのまま宗教法人の存続を認めざるを得ない。

 それどころか、統一教会は東京都内に取得した広大な土地に新しい拠点施設を建設しようとして、地元住民の不安を招き、自治体が混乱しているにもかかわらず、政府は放置したままだ。

教団との関係絶つよう指示したが…

 統一教会を巡っては、昨年7月の安倍晋三元首相銃撃事件をきっかけに、再び問題が表面化。自民党との関係も批判を呼んだ。岸田首相は昨年8月の内閣改造において、会見でこの問題について触れ、

「国民の皆さんの疑念を払拭するため、今回の内閣改造に当たり、私から閣僚に対しては、政治家としての責任において、それぞれ当該団体との関係を点検し、その結果を踏まえて厳正に見直すことを言明し、それを了解した者のみを任命いたしました」

 そう発言して、事実上、統一教会と関係を絶つように指示していた。

 しかし、秋の臨時国会では、野党からの閣僚と教団の関係を指摘する厳しい追及は止まず、宗教法人としての統一教会の解散を求める質問も相次いだ。