まだNPBエンタープライズが創設される以前の日本代表ならばまだしも、今の侍ジャパンで監督業を担うとなれば二足のワラジの片手間では到底不可能だ。何よりイチロー氏自身は「現在のライフスタイルにとても満足している」と周囲に漏らしているという。

 ちなみに侍ジャパンの監督は大会や壮行試合、合宿期間中のみチームに帯同すればいいというわけではなく、キャンプ中やレギュラーシーズン中も代表メンバーをチェックするためNPB各球団の視察に奔走しなければならず、スポンサー回りやメディア取材なども含めればほぼ年間を通じてスケジュールがビッシリと詰まっており、想像以上の激務にさいなまれることになる。

下馬評に挙げられる松井秀喜氏、選手時代にはWBCの出場経験なし

 松井氏も同様だ。現役引退後はニューヨークを拠点にヤンキースの現職だけでなく、主に子どもたちを相手に日米で野球教室を定期的に開催しながら野球界の発展と振興に務めている。

 さらに松井氏は家族と過ごすプライベートをとても大切にしており、たとえオファーがあったとしても愛する奥さんや子どもたちと長期間離れ離れになる日本での単身赴任生活を選ぶとは到底思えない。

 松井氏自身もつい先日、ニューヨークで行われた野球教室で取材に応じた際、侍ジャパンの次期監督候補に自らが挙げられていることを質問され、一笑に付しながらやんわりと否定している。

 そもそも松井氏は「ここまで再三にわたって自身の名が候補者として挙げられている古巣の巨人監督にもまるで興味がなく、どちらかと言えばヤンキースでのコーチ業のほうに関心がある」ともっぱらだ。かつての現役時代に所属していたヤンキースからOKをもらえずWBCには一度も参加しなかった松井氏がいきなり“無縁”の侍ジャパン監督に就任するというシナリオ自体にも、やや無理がある感は否めない。