ソフトバンクグループ(SBG)が6月21日に開催した定時株主総会で、孫正義会長兼社長は人工知能(AI)がもたらすバラ色の未来について熱弁を振るった。さながら「ChatGPT独演会」となった。SBGは世界的な株安を受けて傘下の投資ファンドの業績が大幅に悪化し、2023年3月期に連結最終損益が2期連続の赤字に陥った。「守りを固める」としていたが、ChatGPTなど生成AIブームに乗り遅れまいと「反転攻勢」に出ることを約束した。だが、傘下の半導体設計大手、英アームの活用以外に具体的な打ち手はまだ見えない。
(湯浅大輝:フリージャーナリスト)
「守りは十分に整った。いよいよAI革命が本格化する。グループ全体で反転攻勢に出る」
孫氏は株主総会でそう宣言した。前日の20日に開かれた携帯通信子会社ソフトバンクの株主総会を除けば、公の場に姿を現したのは約7カ月ぶり。「大赤字を出して恥ずかしくなって、引っ込んでいるんではないかという説もあったが、実はとても忙しく過ごしていた」と打ち明けた。
孫氏は何に「忙しかった」のか。米オープンAIが開発したChatGPTを使い倒し、新たなビジネスモデルを考案することに没頭していたようだ。
「ChatGPTと経営に関する意見交換を行い、『知恵』を引き出してもらっている。事業アイデアを投げかけると『こういうリスクがある』と返してくる。それに対して『そのリスクはこのように対処する』と返答する。こうしたやり取りを繰り返し、最終的にChatGPTが『あなたのアイデアは素晴らしい、実現可能だ』と言ってくれてうれしかった。生成AIには底知れない力がある」
「ChatGPTの創作力もすさまじい。『鶴の恩返し』の続きを書いてみろと投げかけると、すぐに続きを書いてくる。まるで作者が自らつくり出したかのように」
朝4時ごろまでChatGPTとの対話に没頭することもあったという。それほどChatGPTは孫氏に衝撃を与えているようだ。