米アップルは5日(現地時間)、これまで開発が噂されてきた現実世界と仮想世界を融合するXR(クロスリアリティー)端末を発表した。「Apple Vision Pro」という名称で、頭部に装着するゴーグル型のヘッドマウントディスプレー(HMD)だ。XR端末は米メタやソニーグループなどが先行し、一時はメタバース(仮想空間)市場の拡大に期待が高まった。だが、メタが関連事業で巨額の損失を続けるなど苦戦が目立ち、「メタバースはオワコン(終わったコンテンツ)なのか」といった将来性を懸念する声も聞かれる。アップルのVision Proはメタバースを復権させるか。
(湯浅大輝:フリーランスジャーナリスト)
「One More Thing(さらにもうひとつ)」
アップルが5日に開催した「WWDC(ワールドワイド・デベロッパーズ・カンファレンス」。パソコンの「Mac」、基本ソフトの「iOS」、腕時計型端末の「Apple Watch」などの新製品や新機能の紹介が一通り終わると、同社のティム・クックCEO(最高経営責任者)がお決まりの台詞で新たなVision Proを発表した。
「アップル史上、最も革新的な製品の一つになるだろう」
「Macがパーソナルコンピューティングを、iPhoneがモバイルコンピューティングを切り拓いてきたように、Vision Proは『空間コンピューティング』を切り拓く」
クックCEOはそうぶち上げた。価格は3499ドル(約50万円)からで、まず米国で2024年初めに発売し、その後同年末までに他の国にも展開する。
WWDCはエンジニア向けにアップルが毎年開催しているイベントで、今回の目玉はアップル初となるXR端末になるのではとテック業界で期待が高まっていた。XRとは、コンピューターグラフィックス(CG)で構築した仮想現実(VR)や、CGと現実世界を重ね合わせる拡張現実(AR)などを総称する言葉として使われている。
アップルのVision Proはどんな製品か。