メタバースは必ずしもVR(閉じた仮想空間)に限定したものではない。リアルとバーチャルが相互に作用し合い、シームレスになった時に生まれる体験の中にこそその真価が発揮されるのではないか(CES 2023にて、筆者撮影)

(朝岡 崇史:ディライトデザイン代表取締役、法政大学大学院客員教授)

「当社の事業の全てを包括する社名が必要になってくる」

 2021年10月28日、米フェイスブックのマーク・ザッカーバーグCEOがメタへの社名変更を高らかに宣言し、社運を賭けて、まさに鳴り物入りで巨大な仮想空間・メタバースの事業に参入した。

 当時驚いたのはその桁外れの投資額だ。ザッカーバーグは2021年12月期だけで100億ドル(約1兆3400万円)もの投資をすると話し、10億人のユーザー獲得(これもフェイスブックの約3分の1規模だ!)に向けて今後5~10年間は莫大とも言える投資を継続すると大風呂敷を広げた。

 案の定、悪い予感は的中し、この宣言の後、メタの業績はダウントレンドが続く。景気後退と規制強化で経営の屋台骨である広告収入が減少、株価は昨年末には3分の1程度にまで急落した(現在は2分の1程度まで持ち直してきている)。

 また3次元コンピューターグラフィックスの革命児として名を馳せ、メタでVR関連の要職にあったジョン・カーマック氏が昨年末に突然退職を発表した。これもメタにとっては不都合な真実だ。

 メタが注力するメタバース関連の事業は、ユーザー同士がバーチャル世界で会話、イベント、ゲーム楽しむ「ホライゾンワールド」(日本国内では未導入)と、会議やプレゼンなど主にビジネス用途で利用される「ホライゾンワークルーム」(日本国内でも導入済み)の2種類のアプリである。交流サイト、フェイスブックの延長線上でバーチャル空間のあり方を構想すると、「ホライゾンワールド」や「ホライゾンワークルーム」のような世界観になってしまうということだろうか。

 いずれのサービスもユーザーはメタが開発した専用のゴーグル「Meta Quest 2」を着けて参加する。