写真:アフロ

(勢古 浩爾:評論家、エッセイスト)

 テレビではいまだにグルメ番組が多い。

 日本のテレビはおおげさにいえば、吉本興業(お笑い芸人)とジャニーズの二大勢力におんぶにだっこでやってきた。いまやテレビ界はそのジャニーズの性加害問題で大揺れである。

 この問題については、日本の週刊誌がこれまで取り上げてはきたが、テレビ業界は黙殺してきた(日本のマスコミは恥知らずにも、自分たちに不都合な問題は黙殺する)。ところがイギリスのBBCがこの問題を取り上げ、それに勇気をえて、ジャニーズのタレントの中から声を挙げるものがでてきた。

 ここにきて北野武が「芸人は奴隷並みに扱われてきた」と発言をした。「日本でもLGBTQの問題やセクハラについて声をあげられる時代がようやく訪れた」といい、「(日本の大きな芸能事務所は)タレントを奴隷のように扱い、それが今日まで続いている」とコメントしたのである。

 そのことはともかく、グルメ番組はお笑い番組ともジャニーズのタレントが出演するバラエティー番組とも直接には関係がなく、無難な領域なのである。また不景気な現在、低予算でできることもメリットである。

「許可どり」のわざとらしさが腹立たしい

 グルメ番組には、街歩きや、タクシー運転手にうまい店を紹介してもらうものや、行列のできる店など、さまざまある。そこそこ視聴率も稼げるのだろう。現にわたしは、視聴率のモニターは設置してないが、よく見ている。タクシー運転手に聞くグルメ番組は、タレントも使わず局アナですませているからさらに安上がりなのだろう。

 街歩きや住民にうまい店を聞くという番組が増えるにつれて、あらたに作られた言葉が店の「許可どり」である。

 これについては気に入らないことがひとつある。TBSの番組で、バナナマンの日村勇紀が、住民に推薦された店の「許可どり」をするのだが、そのときの、もってまわった、わざとらしいバカていねいな口調が腹立たしいのだ。

「私東京でバナナマンというお笑いをやっている日村というものですが」という、一見思い切りへりくだっているようで、じつは、どうだ驚くなよ、という雰囲気を漂わせた前口上がまず気に入らない。そのあとに、街の人からおたくの店がうまいと聞いたので、わたしが食べているところを撮影させてもらえないかというお願いなのですが、「だめでしょうか」というのだ。

 わたしはこの否定から入るあざとさに腹が立ったのだ。いまではなぜかこの言い方はやめているが、「だめ」といわれるわけがないという腹の中が見え見えなのである。ほんとうは「地方の店なんていちころよ」とか思ってるのではないか。