日米韓イージス艦によるミサイル対応訓練(資料写真、2023年4月17日、提供:The South Korean Defense Ministry/ロイター/アフロ)

(北村 淳:軍事社会学者)

 アメリカ戦略軍は指揮統制演習を実施している。アメリカは、先制核攻撃を核戦略のオプションの1つ(筆頭)として掲げているため、戦略軍の演習は北朝鮮、イラン、ロシア、中国に対する先制核攻撃図上演習ということになる。

 核兵器開発を進めている北朝鮮とイランに対する恫喝、ならびにアメリカ中心の国際秩序に反抗しウクライナに侵攻しているロシアに対する威嚇、そしてアメリカがアジア太平洋で維持してきた覇権を切り崩しにかかっている中国に対する警告、などが先制核攻撃演習の目的だ。

ロシアが核兵器を使用するという恐怖感を煽る米国

 いかなる人々団体そして国家といえども、社会心理学ではミラーリングとよばれているように他人や他国の行動を自らの思考の視点から推測しがちである。

 第2次世界大戦終末期にアメリカは対日戦争を可及的速やかに終結させ、かつ自らの損害を抑えるために、ほとんど死に体に瀕していた日本に対して二度も原爆攻撃を敢行した。そのような経験のあるアメリカは、ロシアや中国もウクライナ侵攻や台湾侵攻を速やかに終結させると決意した場合には広島・長崎と同じく「ダメ押し的にでも核兵器を使いかねない」とミラーリングしてしまうことになる。

 唯一の核使用国であるアメリカは「ロシアが核兵器、少なくとも戦術核を使用する」という恐怖感を、現在ロシアと交戦中のウクライナはもとよりヨーロッパ諸国や日本などの同盟国にも浸透させる努力を続けている。