1.SNS上に国家機密が流出した経緯

①4月6日、米紙ニューヨーク・タイムズが、米政府高官の話として文書の流出を最初に報じた。

 その後、英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)などが詳細を報じた。

 また、FTは米政府関係者が取材に対して、投稿された資料の一部が実際の機密文書である可能性を認めたと報じた。

②4月7日、ニューヨーク・タイムズ(電子版)は、中国や中東などに関する米国の機密文書がSNS上に流出していることが新たに分かったと報じた。

 4月6日にはウクライナ情勢に関する北大西洋条約機構(NATO)の機密文書の流出が報じられており、専門家によると、流出文書は100件を超える可能性があるという。

 また、ニューヨーク・タイムズは、流出した文書にウクライナへの軍事支援に関する韓国大統領府内の協議内容が含まれていたと報じた。

 この文書ではウクライナに武器供与しない方針を持つ韓国政府が、ウクライナを支援する米国から韓国製弾薬の供給を巡って圧力を受け、苦悩するやりとりが含まれており、方針転換を検討する選択肢も記されていた。

③4月9日、英紙ガーディアンは、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ政権が進める司法制度の変更案を巡り、同国の対外情報機関「モサド」高官が「抗議するよう職員と国民に促し、いくつかの明確な行動喚起も行った」と記載された文書も出回っていると報じた。

 また、同紙は、流出した文書に北大西洋条約機構(NATO)加盟国であるフランス・米国・英国・ラトビアの特殊作戦要員100人未満で構成された小規模部隊がウクライナで活動しているという内容が盛り込まれていると伝えた。

 フランスのセバスチャン・ルコルニュ国防相は報道官を通じてフランス軍がウクライナの戦場で作戦中だと言及した文書の内容を否定した。

④4月10日、米国防総省は機密文書が流出したことについて、国家安全保障上の「非常に深刻な」リスクだとの見解を示した。

 当局によると、それらの文書の書式は幹部指導者らに出される文書と似ているという。当局は流出者を特定するため調査を始めている。

 問題の文書は、ツイッター、4chan、テレグラムなどのオンラインプラットフォームや、コンピューターゲーム「マインクラフト」の「ディスコード」サーバーに最初に現れた。

⑤4月10日、国防総省のクリス・ミーガー報道官は流出した文書について、記者会見で「国家安全保障上のきわめて深刻なリスクで、偽情報を拡散させる恐れがある」と述べた。

 また、「本件がどのように起きたのか、どれくらい広がりがあるのかはまだ調査中だ」と説明した。

「この種の情報がどのように誰に提供されるのか、細かく検討するための措置がとられている」と話した。

⑥4月10日、米紙ワシントン・ポストは、米国と同盟関係にあるエジプトがロシアに供与するために最大4万発のロケット弾の製造を計画していたと報道した。

 流出した2月17日付の文書とされる記述を示し、エジプトのアブドルファッターフ・アッ=シシ大統領が軍幹部に「西側諸国との問題を避けるため」として、計画を秘密裏に進めるよう指示していたと伝えた。

 これに対し、米国家安全保障会議(NSC)のカービー戦略広報調整官は4月11日、記者団に対し「エジプトが殺傷能力のある兵器をロシアに提供していることを指し示す情報はない」と述べた。

⑦4月11日、ロイド・オースティン米国防長官は、機密文書の流出問題について、流出源が判明するまで徹底的に調査する考えを示した。

 同氏は会見で「我々はこの文書の出所とその範囲を突き止めるまで調査を続け、すべての石をひっくり返していく」と語った。

⑧4月11日、アントニー・ブリンケン米国務長官は、米軍などの機密情報とみられる文書がネット交流サービス(SNS)に流出した疑惑を巡り、ウクライナのクレバ外相と電話協議したと、記者会見で明らかにした。

 文書にはロシア軍の侵攻に対抗するウクライナの部隊配置や防空能力に関する内容もあり、ブリンケン氏は「永続的な支援」を伝えて信頼回復に努めた。

⑨4月12日、米紙ワシントン・ポストは、流出文書が最初に確認されたチャットルームの男性メンバーのインタビュー記事を掲載した。

 その中で男性メンバーは、文書を流出させたのは20代前半のカリスマ性のある銃愛好家で、どこかの軍基地で働いている人物だと述べた。そして、このチャットルームのリーダーが文書を流したと報じた。

 流出は当初、この小規模のチャットルームにとどまっていた。

 しかし、3月に入りメンバーらはコミュニケーションアプリである「ディスコード」の別のサーバーにも流出文書を投稿するようになった。

 そうしたサーバーには、ゲーム「マインクラフト」やフィリピンのユーチューバー専用のものなどがあるという。

 文書はそこから、掲示板「4chan」や、チャットアプリ「テレグラム」の親ロシア派チャンネルへと広がった。

 一部は改竄され、ウクライナの戦死傷者数が増やされるなどしていた。

⑩4月13日、ホワイトハウスのカリーヌ・ジャンピエール報道官は、記者会見で文書の流出を巡るワシントン・ポストの報道について問われたのに対し次のように述べた。

「司法省の捜査が続いている。ワシントン・ポストのその報道についてはコメントしない」

 その上でジャンピエール報道官は「国防総省は機密情報へのアクセスについてさらに厳しくする措置をとった」などと述べ、さらなる情報の流出が起きないよう適切に対応していると強調した。

⑪4月13日、ガーランド米司法長官は、21歳の空軍州兵を逮捕したと発表した。マサチューセッツ州の空軍州兵のジャック・テシェイラ容疑者は、マサチューセッツ州ボストン近郊にあるダイトン(人口約8000人)の自宅で逮捕された。

 米紙ニューヨーク・タイムズは動機について、戦争ゲーム好きの友人らに「現実の戦争」を見せたかったと報じている。

⑫4月13日、CNNは、同社が入手した流出した米国の機密文書にウクライナで戦うロシアの民間軍事会社ワグネルが、北大西洋条約機構(NTO)加盟国のトルコから兵器や装備品の購入を試みていたことを示す情報があることが分かったと報じた。

 また、CNNは「国務省報道官は具体的な情報への確認やコメントはしないと述べた」と報じた。