医者を目指す多くの若者が高額な医学部進学予備校に通っている(写真:アフロ)

「あれ、こんなところでおじさんが働いてる……」

 近年、非正規労働の現場で、しばしば「おじさん」を見かける。しかも、いわゆるホワイトカラーの会社員が、派遣やアルバイトをしているケースが目につくのだ。45歳定年制、ジョブ型雇用、そしてコロナ。人生100年時代、中高年男性を取り巻く雇用状況が厳しさを増す中、副業を始めるおじさんたちの、逞しくもどこか哀愁漂う姿をリポートする。

(若月 澪子:フリーライター)

「異次元」の医学部進学予備校

「異次元の少子化対策」

 SF映画の予告編のようなフレーズだ。「異次元」と言うからには、男性も出産できるような画期的な医療技術に補助金でも出すのかなと思いきや、そういうことではないらしい。またお得意の「お金配り」のようだ。

「対策」の一つは、大学の給付型奨学金の対象を、条件を満たした年収600万円の世帯にまで拡充するという。でも大学は、入ってからだけでなく、入るまでもお金がかかるんスよね……。

「私が勤める予備校の授業料は年間400万円。ライバル校も年間200万円はしますよ」

 こう話すのは、医学部進学を目指す高校生~浪人生を専門とした予備校で、講師や生徒をサポートする管理業務を行ってきたFさん(40代後半)。

 予備校で年間400万円とは、庶民からするとこれまた「異次元」の話である。

「少子化で大学受験予備校の多くは撤退・縮小しています。今、予備校でお金になるのは医学部受験だけ。医学部進学予備校はこの額が払える高所得者層をターゲットにした商売です」

 Fさんは予備校のみならず、進学校などで「医学部受験の今」について講師として話す機会が多いという。

「少子化でも、医学部を目指すお子さんは一定数いる。かつては生徒の8割が医師の子女でしたが、最近は一般家庭と半々です。医学部の学費が下がっているし、銀行も貸すところがないので医学部生ローンみたいな商品を出していて、一般家庭の受験者が増えたんです」

 医学部受験の話は、すこぶる舌が滑らかなFさん。

 そんなFさんには、もう一つの顔がある。3年ほど前から、本業のかたわら、週1で夜の総合病院でアルバイトをしているのだ。

 医療と関係がありそうななさそうなFさんは、なぜ夜の病院で副業をしているのだろう。

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