食文化の多様性の復権
徳島の高校でのコオロギ試食体験は子供たちが新たな食の選択肢を知ってもらう良い機会だったと思います。この試食は調理師をめざす食物科の生徒からの提案がきっかけと聞いています。
食べたい生徒が試食したもので、全員一律に給食として提供されたものではありません。ちなみにメニューは一回目が「コオロギパウダー入りカボチャコロッケ」、二回目が「コオロギエキス入り大学いも」でした。美味しそうなので作って食べてみたいと思っています。
東南アジアやアフリカなど熱帯地域ではコオロギをはじめさまざまな昆虫が昔から日常食べられている普通の食材です。日本でもつい昨日まで昆虫は“美味しいタンパク源”として食べられてきました。いまでも長野など地域によっては貴重な伝統食として愛されていますし、このところ売り上げが伸びていると聞いています。
食べる、食べないは個人の嗜好ですが、コオロギ食を全否定することはその国や地域の食文化を蔑視することにならないでしょうか。2013年のFAO報告には、そうした地域に根差した昆虫食文化を環境面や栄養面、そして安全面から評価し、維持・拡大することで、貧困と栄養不足を解消するねらいがあります。
「美味しくて安全」が普及の決め手です。そのためには受容傾向(食物新奇性嗜好)の強い消費者への働きかけが重要です。あるアンケートでは9割が「昆虫食を避ける」と答えたそうです。逆に1割は「食べてみてもよい」と考えているのではないでしょうか。
日本人の1割1250万人が食べて「うん、これはいけそう!」と思ってもらえたら、きっと嫌悪感の壁も乗り越えられると思います。これからも五感(視・聴・嗅・味・触)をフル回転して楽しめる、多様な食材としての昆虫食の醍醐味を多くの人に伝える活動を、日々続けていきたいと思っています。
(編集協力:春燈社 小西眞由美)