コオロギをめぐる7つの懸念に答える

●好気性細菌、芽胞形成菌などを含むので安全性が心配

 これらの菌類はコオロギに限らずあらゆる動植物に含まれているものです。好気性細菌は加熱殺菌すれば死滅します。芽胞形成菌は高温に強く、加熱しても死滅しない場合があるため、残った場合は発芽しないよう速やかに冷蔵するなど、温度管理に注意しましょう。

●ボツリヌス菌が心配

 やはり芽胞形成するボツリヌス菌も自然界に広く分布しています。食用として十分衛生的に飼育された養殖物を加熱殺菌した製品であることを前提とする限り、リスクは他の食品と比べて高いわけではありません。また、他の食品と比べてコオロギにボツリヌス菌が特に多く含まれているという報告はありません。寄生虫も加熱すれば殺菌されます。

 生魚にも寄生虫は多数含まれていますがあまり気にせず食べています。たとえば日本では刺身など生食文化があることから、アニサキスなどの感染リスクは否めません。

 アニサキス自体は加熱すれば死滅しますが、人によっては加熱してもアニサキスアレルギー反応を引き起こす場合があります。加熱殺菌したコオロギに生魚以上のリスクがあるとは考えられません。要は摂取量の問題で、コオロギを大量に食べれば危険性が生じます。それはどの食品にも言えることで、コオロギだけが特別というわけではありません。

●重金属類(カドミウムなど)生物濃縮が心配

 コオロギの飼料である魚粉や穀物に重金属が含まれている可能性がないとは言えません。しかしこれは、魚粉や穀物を食べている鶏や魚も同じ条件で、コオロギに限ったリスクではありません。

●発がん性があるかもしれないのが心配

 コオロギに含まれるキチンに特別の発がん性があるのではという声がありますが、そのようなことを立証した論文はなく、根拠のない杞憂と考えて差し支えないでしょう。コオロギに含まれるキチンはエビやカニ等にも多く含まれており、これらが発がん性の高い食品であり危険だとは全く認識されていません。

●ゲノム編集コオロギが心配

 ゲノム編集食品が消費者に届くまでには、各省庁(農林水産省、厚生労働省など)への相談および届出が必要です。実際にこのフローを通過して販売可能な状態になった食用の品種はトマト、マダイ、トラフグの3つのみ(2023年2月時点)です。

●酸化グラフェンが含まれているのが心配

 酸化グラフェンは人体に有害な物質で食物にも含まれていることが確認されています。 ただし酸化グラフェンには当然ながら自己複製機能はなく、少量を吸い込んだ場合でも数週間で代謝して排出されるとする研究結果が報告されています。コオロギが酸化グラフェンを大量に含んでいるという報告はありません。

●プリン体が多いのが心配

 コオロギが他の食品に比べてプリン体が10倍多いという報告はありません。むろん大量に食べれば痛風等につながる恐れがないとは言えないでしょう。ただこれはコオロギに限ったことではありません。