タイのプラユット・チャンオチャ首相がワチラロンコン国王(ラーマ10世)の承認を得て3月20日に下院(定数500議席、任期4年)を解散したことから、同国では5月14日に総選挙が実施されることになった。
事実上の軍事政権が続くタイでの総選挙は2019年以来となる。
国民の支持を集めるタクシン元首相の次女
前回選挙では、2006年の軍事クーデターによって首相の座を追われたタクシン・チナワット元首相系の野党「タイ貢献党」が最大議席を獲得したものの、陸軍大将のプラユット首相を支持する与党「国家国民の力党」が親軍派の少数政党と連立を組んで多数派を形成、政権を維持した。こうした経緯を見ても、国民のプラユット政権に対する潜在的な不満は相当なものになっていると見られる。
それゆえ今回の総選挙では、反軍政の野党が前回同様あるいはそれ以上の議席を獲得する可能性は高い。もし野党が単独、あるいは野党連合で過半数を制することができれば、2014年のクーデター以降続いていた事実上の軍事政権が終わりを告げることになる。
野党の中でもっとも注目すべきは、最大野党である「タイ貢献党」の動きだ。同党は、タクシン元首相の次女で、党の改革担当アドバイザーを務めるペートンタン・チナワット氏(36)を次期首相候補として擁立する公算が高い。
ペートンタン氏の人気は高い。タイ国立開発行政大学院大学(NIDA)が3月19日に発表した世論調査によると、「首相に誰を推すか」との質問に対し、ペートンタン氏との回答が38.2%、続いて前進党のピタ・リムジャラーンラット党首が15.75%、プラユット首相が15.65%となっている。この結果からも、ペートンタン氏に対する国民の期待の大きさがうかがえる。