見た目は可愛いけれど実際は猛獣
その四川省をマグニチュード8.0(中国地震局発表)の巨大地震が襲ったのは2008年5月のことだった。その直後に私は現地に入っている。
その時に地元の放送局が大騒ぎして伝えていたのが、パンダの保護研究施設の一部が崩壊して、そこから数頭のパンダが逃げ出したことだった。日本人の感覚からすれば、愛らしいパンダに接することのできるまたとない機会で、積極的に探しに出そうなものだが、地元の人たちにとってはそれどころではなかった。
パンダは人を襲うからだ。中国語でジャイアントパンダは「大熊猫」と書く。文字通り猫のような姿の熊なのだ。
しかも本来は雑食で、肉も食べる。人を食べることもあるという。だから、見かけても近づくな、気をつけろ、と呼びかけていた。
幸いにして、そう時間も経たずに脱走した全頭が保護されたが、それがまた速報で伝えられるほど、重大な事態だった。
日中友好の架け橋ともされてきたパンダ。涙を流してまで別れを惜しむ日本のパンダ愛。それだけ愛くるしい姿に魅了されるのだろう。ただそれも、遠くから眺めたり、遮断された厚い透明な壁のこちら側からのぞいたりしているから許されることでもある。その正体は言ってしまえば猛獣の類いだ。一線を超えてしまうと、何をするかわからない。
それが覇権主義の中国の象徴であるというのも、よくできた話だ。