台北動物園の一頭のパンダを巡って、中台の綱引きが勃発している。
先月、台北動物園の人気者、パンダの「団団」(トゥアントゥアン)が、脳障害にかかって倒れた。パンダの寿命は20年と言われるが、「団団」はすでにこの8月、18歳を迎えている。
もちろん、台湾に野生のパンダは生息しない。このパンダ、中台蜜月時代に中国から寄贈されたものなのだ。
胡錦涛書記長と台湾野党トップの会談で決まったパンダ寄贈
話は、17年前の2005年に遡る。台湾は、いまの蔡英文(さい・えいぶん)民進党総統の「先輩」にあたる陳水扁(ちん・すいへん)民進党総統の時代である。
政権2期目に入った陳水扁総統は、「憲法改正→台湾共和国誕生→台湾独立」を、密かに目論んでいた。
これに怒り心頭となった中国側の胡錦濤(こ・きんとう)政権は、同年3月、「反国家分裂法」というおっかない法律を制定。その第8条で、こう明記した。
<「台湾独立」の分裂勢力が、いかなる名義、いかなる方式であれ、台湾を中国から分裂させようとしている事実が造成された場合、もしくは平和的な統一の可能性が完全に喪失した場合、国家は非平和的な方式及び必要な措置を講じて、国家主権と領土保全を死守しなければならない>
条文にある「非平和的な方式」とは、すなわち武力行使のことだ。中国は「反国家分裂法」を制定するだけでは懸念が収まらず、もう一つの行動に出た。それは、陳水扁民進党政権と激しく対立する野党・国民党の連戦(れん・せん)主席を、中国に招くことだった。
こうして、同年4月26日から5月3日まで、連戦主席の「平和の旅」が実現。4月29日午後、北京の人民大会堂で、胡錦濤共産党総書記と連戦国民党主席の歴史的なトップ会談が実現した。私もこの時、北京で見守っていたが、興奮したのを覚えている。