引退試合のアントニオ猪木(1998年)写真/平工幸雄/アフロ

(小林偉:放送作家・大学講師)

意外に知らない「出囃子」の原曲は?

 曲名を聞いても知らないのに、その曲を聴くと特定の情景が思い浮かぶ・・・そんな曲のことを・・・筆者はパブロフの犬ならぬ“パブロフのM”と命名しております。

 以前もそうした“パブロフのM”をいくつかご紹介いたしましたが、今回もまたお届け致します。先に音源をお聴きになってから、文章を読み進めていただくと、より楽しんでいただけると思いますよ。

 早速まいりましょう。皆さんはこちらの『CAN’T UNDO THIS!!』という曲をご存知でしょうか? 演奏しているのはマキシマイザーという方・・これではピンとこないという方はまず曲を、特に開始1分36秒ほどからお聴きいただけますか?

●CAN’T UNDO THIS!!/MAXIMIZOR

 ♪ジュリアナ東京!・・・ですね。ある年代から上の方には、お立ち台でボディコンのお姉ちゃんが扇子片手に踊っている様が浮かんでくるはず。若い方にはバラエティ番組のバブルな感じのBGMとして認識されているかもしれませんね。

 この曲をリリースしたのは「MAXIMIZOR(マキシマイザー)」、これは星野靖彦(ほしのやすひこ)という方が使っていたペンネームの一つ。この方は「CAN’T UNDO THIS!!」がリリースされた1992年当時、あのエイベックスに所属していたテクノミュージシャン。

「マキシマイザー」の他には「スターゲイザー」や「ディノ・スター」などの名前で活動していらっしゃいました。その後は、作曲家・編曲家に転身して、MAXの「GIVE ME A SHAKE」とか、浜崎あゆみの「POKER FACE」、安室奈美恵の「SUPER LUCK」、華原朋美の「A BROKEN WING」などなど、多数のヒット曲を手掛けられた方でもあります。

 この「CAN’T UNDO THIS!!」がリリースされた1992年は、いわゆるバブル経済の末期。そのため、1991年5月に開店した東京・芝浦「ジュリアナ東京」などのクラブでよくかかり、一大人気ナンバーとなっていたんですね。

 特に、この曲の開始1分36秒過ぎ辺りからの、アゲアゲな曲展開が好まれ、バブル期を象徴するような曲にもなりました。そのため今では、いかにも“バブル”なアーカイブ映像のBGMとして、未だに使用されているというワケです。タイトルの「CAN’T UNDO THIS」とは「元に戻すことはできない」という意味。それまた“バブル経済”を象徴しているようで、面白いですよね。

 ちなみに、ジュリアナ東京は開店から3年3か月後の1994年8月に閉店。正に時代の徒花でした・・・。

 さて次はこちらの曲です。