(福島 香織:ジャーナリスト)
昨年(2022年)秋に中国で発生した中学生(日本の高校生に相当)の失踪事件が3カ月後の今、中国社会を騒然とさせている。遺体が1月28日に発見されたからだ。
だが、遺体が発見された状況には不可解な点が多い。背後には中国特有の臓器移植の闇があるのではないか、と多くの人たちが疑っている。
警察は自殺をほのめかす
失踪していた中学生は、江西省上饒市の私立進学校、鉛山致遠中学(日本の高校に相当)に入学したばかりの胡鑫宇(こきんう、15歳)。彼は2022年にこの進学校を受験して合格、同年9月から毎学期1500元の奨学金を受け取ることが決まっていた。成績は県の上位グループに属し、もし受験の成績がもう1点高ければ奨学金は2000元になっていたという。
その彼が10月14日夕方、校内の寮から外に出たきり行方不明になっていた。
胡鑫宇少年は進学校の授業についていくのが大変であること、そのために睡眠不足や集中力低下に悩んでいることなどを教師や友人に漏らしていた。また、母親に電話をして泣きながら家に戻りたいと訴えていたことなどもあり、自殺目的の家出ではないか、と言われていた。物理の教科書の最後のページには「もし自分が生きていかなったら、どうなる?」などと走り書きがあったという。失踪当日には、食堂で夕食をとった後、校舎の屋上にのぼってじっと遠くを眺めていたりする姿も確認されている。