(福島 香織:ジャーナリスト)
中国では1月21日から春節休みが始まった。ゼロコロナ政策が解除されて初めての春節休みだ。21日は除夕(旧暦の大晦日)、22日が春節。この日をはさみ40日間を春節期間とするが、その間、延べ21億人の人民が帰省したり旅行したりと移動する。果たしてコロナ明けの里帰り、中国の人々は喜びに満ちて盛り上がっているのだろうか。
北京大学の推計によると、中国ですでに人口の64%、約9億人が新型コロナに感染したという。中国当局も12月8日以降のゼロコロナ政策緩和後の新型コロナ感染に関係する死者は1カ月余りで6万人と発表した。これは少なくない数字ではないか。しかも、この数字ですらかなり少なく見積もられていると思われている。
実際、北京や上海、天津など、本来医療設備が充実しているはずの大都市でも病院がパンクし、解熱剤や医療物資が不足し、多くの高齢の官僚やその家族、学者、芸能・映画界の著名人らの訃報が相次いでいる。火葬場はどこも霊柩車の車列がならび、通常の料金では火葬も1カ月以上待たされるほどの混雑だという。
12月に亡くなった人々をようやく荼毘に付すことができた今の時期、春節だからといって、明るい気持ちになれない人はきっと多いはずだ。たとえ、自分の家族に不幸がなかったとしても、近所、友人知人に不幸があったなら、例年の旧正月より盛大にお祝いする気にはなれまい。
また、これまでの感染状況の報道はどちらかというと都市部を中心としていた。それは、都市の若者たちが目の当たりにした状況をSNSなどで拡散するため、状況が可視化されているからだ。老人が残る地方の農村では今どのような状況なのか。都会から里帰りしてきたときに、もっと悲惨な光景が待ち受けている可能性もあろう。