米銀に逆ザヤ拡大リスク

 銀行は、短期で調達した資金(預金)を、それより長い期間で運用することが多いのですが、現在のような逆イールドでは利益が圧縮、あるいは逆ザヤとなって損失が出ます。だから逆イールド時には貸出が抑制され、経済活動が不活発になるのです。

 もっとも、資金の運用先が貸出なら、3カ月ごとに金利を見直すといった契約もあるので、逆イールドの影響は比較的軽微です。問題となるのは債券です。

 米連邦預金保険公社(FDIC)によると、米銀は昨年9月末時点において、債券ポートフォリオに6900億ドル(約90兆円)の含み損を抱えていました(図6)。これは自己資本の32%に相当する莫大な金額です。途中売却をしない限り、損失は表面化しないとはいえ、総資産(23兆ドル)の4分の1を占める債券残高(約6兆ドル)が、償還期限まで何年もあり、資金が固定化してしまうのです。

【図6】出所:米連邦預金保険公社(FDIC)、注:データは2022年9月末まで
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 この間、インフレの激化で預金金利が上昇するならば、銀行は債券の含み損のみならず、運用と調達の逆ザヤ拡大で巨額の損失が発生するリスクがあります。実際、2020年4月~21年9月における米5年債の利回りは平均0.5%でしかないのに、預金金利のベースとなるフェデラルファンド(FF)レートは現在4.3%に上昇しており、3.8%ポイントの逆ザヤとなっている計算です。

 こうした状況が改善されないまま、各種シグナルが示すような不況が到来するならば、貸出先の倒産や、保有する社債の格付け低下といった資産内容の悪化で、金融危機に至る可能性も出てくるのではないでしょうか。

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※本稿は筆者個人の見解です。実際の投資に関しては、ご自身の判断と責任において行われますようお願い申し上げます。