藤井の底知れない強さ

 王将戦(藤井王将ー羽生九段)第1局は、1月8日、9日に静岡県掛川市の「掛川城 二の丸茶室」で行われた。12年連続で開幕局の対局場になっている。

 両者の公式戦の対戦成績は、藤井が7勝1敗と大きく勝ち越している(王将戦の開幕時点)。

「振り駒」で後手番となった羽生は、以前に得意にしていた「1手損角換わり」という手法を採った。いろいろな作戦を試みるひとつとして用いたという。

 中盤で激闘が繰り広げられ、両者の長考が相次いだ。形勢は互角と思われた。しかし、藤井が終盤で厳しく攻め立てると、羽生は全盛期に発揮した「羽生マジック」を繰り出せず、そのまま寄せ切られる結果となった。

 羽生は、「何が悪かったのか、調べてみないとわかりません」と終局後に語った。

 藤井は、相手に不利を感じさせないで勝ったのだ。それこそ底知れない強さといえよう。

 王将戦第1局2日目の1月9日は「成人の日」。藤井が卒業した愛知県瀬戸市の小学校の地区では、8日に「二十歳を祝う会」が開かれ、来賓から「藤井さんは王将戦の対局があって出席されません」と報告された。

藤井の少年時代のエピソード

 その式典を取材した新聞の記事によると、小学校時代の級友たちは、郷土の誇りとして藤井を尊敬していて、当時の思い出を次のように語ったという。

「おとなしくて真面目だった」「走るのが速かった」「ドッジボールで投げる球が速かった」「クイズとか何でも知っていた」「小学校最後の運動会で締めくくりの挨拶をした」「関西への修学旅行でユニバ(USJ)に行った」「完璧主義で、テストで95点でも不満そうだった」「将棋を指したら、ぼこぼこにされた」

 小学生時代の聡太少年の様子がうかがえるエピソードだった。