エーザイはバイオジェンとともに認知症の治療薬レカネマブを開発している(写真:ZUMA Press/アフロ)

(ステラ・メディックス代表、獣医師/ジャーナリスト 星 良孝)

 エーザイとバイオジェンが米国で開発する認知症の新薬レカネマブが、2023年1月6日に米国食品医薬品局(FDA)から迅速承認を受けた。適応症は早期アルツハイマー病である。認知症患者は、日本では2025年に700万人に達すると試算されている。そんな患者を救う一助になるかと期待が寄せられている。

 中でも、この薬に命運をかけるのが開発したエーザイである。創業家出身で社長の内藤晴夫氏が、その効果を力説した映像が報道でも幅広く伝えられたため、目にした方も多かったのではないか。

 レカネマブは既に欧州でも承認申請が出され、日本でも2022年度中の承認申請が予定されている。

 しかし、この認知症新薬の置かれた状況を素直に申し上げると、五里霧中と言っていい。もちろん、早期アルツハイマー病の代表的な治療薬になる可能性は十分にあるが、まだ評価が定まらない。今回は、海外の論文などを参考に、五里霧中だと評価した背景を考察する。

 なお、動画でもレカネマブをめぐる論文について述べているのでよろしければ参考にしていただければと思う。

 そもそもアルツハイマー病とはどういうものかというと、脳の状態が変化することで、認知機能の低下を起こす病気である。アミロイドβという老廃物が脳に蓄積して起こると考えられている。

 認知機能とは記憶する能力や作業する能力、空間や時間を認識する能力などで、生活していく上では欠かせない脳の働きをいう。認知症の原因は複数あるが、おおむね半数はアルツハイマー病によるものである。アミロイドβはアルツハイマー型認知症の元凶である。