(文:筧裕介)
認知症のある人に世界がどう見えているのかを分かりやすく解説した話題の書『認知症世界の歩き方』(ライツ社)。著者であるissue+design代表の筧裕介氏が、認知症のためのソーシャルデザインを語る。
週末によくショッピングセンターに出かける歩さん(アルツハイマー型認知症当事者)。ショッピング後にお気に入りのレストランでお昼ご飯を食べていたのですが、尿意をもよおしました。慌てて席を立ち、トイレに行ったものの、間に合わずに失敗してしまいました。実は、最近外出先でトイレの失敗が続いています。
このトラブルの背景にある原因を推測して、可能性として考えうるものを全て選んでください。
1. 認知症の症状で色々なことを忘れてしまい、トイレの使い方がわからなくなってしまったため。
2. お店に迷惑をかけようとしてトイレでない場所でわざと用を足しているため。
3. 視界が狭くなり、トイレのサインを見つけられず、入るのに時間がかかったため。
4. 体性感覚が鈍感になり、我慢できないほど急激な尿意が現れてきたため。
5. 便器も壁も床も白で、便座の位置がわからず、適切に座れなかったため。
これは、2021年9月に出版された私の著書『認知症世界の歩き方』をベースに、2021年12月より始まった「認知症世界の歩き方 検定」の中で出題されている問題の一つです。
正解は、3、4、5の3つです。
認知症というと、1のように、色々忘れてしまう、何もできなくなる、などというようなイメージをお持ちの方が多いのではないでしょうか。
また、インターネット等で検索すると、認知症の症状として、BPSD(Behavioral and Psychological Symptoms of Dementia)と呼ばれる暴力・暴言・徘徊・拒絶・不潔行為等の記述があり、2のように迷惑行為をするイメージをお持ちの方も多いようです。
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