親トランプのツイッターCEOが差し伸べた手
中間選挙後、米政治が動き出した。
共和党内の一部勢力が「12月6日(ジョージア州選出の上院選の決選投票)まで待ってくれ」という声を無視して、ドナルド・トランプ前大統領が2024年大統領選への再出馬を宣言した。
中間選挙では政権党が議席を大幅に失うというジンクスとは裏腹に、共和党は上院で負け、下院も勝ったものの議席数では民主党に大差はつけられなかった。
メディアは、有権者の「トランプ離れ」がその原因だと指摘した。ところが、トランプ氏は「この選挙には不正があった」と耳を貸そうともしない。
こんな政治家は米国史上一人もいない(まあ、その型破りさが彼の魅力でもあり、反体制保守派の一部が支持し続ける要因でもあるだが)。
トランプ氏が2024年、本当に共和党大統領候補として指名され、本選挙でジョー・バイデン氏に再び挑めるのか、どうか。トランプ氏自身も本当に信じているのか、どうか。
多くの米国民は疑問視している(少なくとも筆者が聞き回った米市民10人に8、9人は疑っている)
疑う最大の要因は、トランプ氏が訴追される可能性があるからだ。
ご本人がこの時点で立候補を表明した理由も「訴追逃れ」と見る人が少なくない。
暗殺を恐れたか、司法長官の「時間稼ぎ」
中間選挙が終われば、メリック・ガーランド司法長官は訴追に向けて動くことを仄めかしていた。
11月18日、トランプ氏を今後どうするかで、バイデン政権から独立した立場で捜査を行う「特別検察官」(Special Counsel)*1を任命した。
トランプ氏の2024年大統領選への正式出馬表明を受けて、トランプ氏を訴追する前にまず、「特別検察官」に再調査させ、その助言を受けて訴追するかどうかを決めるという手に出た。
「トランプ氏が大統領選に立候補した今、特別検察官を任命することは公益に資すると判断した」と巧妙な説明をした。
*1=「特別検察官」(Special Prosecutor)は1973年のリチャード・ニクソン政権時代のウォーターゲート事件捜査の際に、連邦裁判所によってアーチボルド・コックス氏が任命された。刑事訴追の権限を与えられたスーパー検察官。ところが「特別検察官」の任命を規定した法律はその後、撤廃されてしまった。
独立した権限の捜査官が必要とされた際には、司法長官が「特別顧問」(Special Counsel、日本語で特別検察官と訳されている)が任命されることになり、捜査の結果の刑事訴追の是非を司法長官に勧告するのが任務。あくまで司法長官の管轄下にある。