(山本一郎:情報法制研究所 事務局次長・上席研究員)
今なお統一教会問題は騒動が広がっており、ようやく自民党議員への応援のバーターとして、統一教会が事実上の政策協定を議員にサインさせていたという問題が出てきました。
宗教法人としての解散命令を出すの出さないの、質問権がどうの、オウム真理教への解散命令は根拠が刑法だった(95年から96年)からどうのという無駄な騒ぎも広がっていますが、信教の自由は別に宗教法人でなくなったとしても問題なく継続できます。その解散命令への準拠が民法か刑法かなんて文化庁にいくら聞いたって彼らは粘るしかできないわけですから、そんなのさっさと裁判所の決定が出るか出ないかに委ねちゃった方が早いんですよ。
8月30日に、WiLLという媒体で、「統一教会は早々に解散命令を出させたらよい」という記事を書いたところ、統一教会の関係者の皆さんからすごく抗議をいただきました。つまり、一番効く方法だぞって彼らが教えてくれていることになります。ありがとうございます、参考になります。
そもそも統一教会というのは、勝共連合を挟んだ、自民党による共産党封じ込めのために都合よく利用してきた歴史的経緯がある偽装宗教団体でした。それが用済みになったにもかかわらず、韓国政府や教祖の文鮮明さん、韓鶴子さんによる日本政府中枢への食い込みが行われていたという点で、深刻な第一級のスパイ事案であったという認識は強く持つべきだと思います。
皆さん、このあたり軽く見ているようですが、海外の、しかも宗教団体を装った組織が、日本国民とその家族に深い傷跡を残しながら、選挙協力を餌に政策に介入し、政府中枢に影響を及ぼしていたんですよ。軽視するわけにはいかないはずです。
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それもこれも、自民党の保守傍流であった清和会によるもので、祖父・岸伸介さんから孫・安倍晋三さんという三代にわたって続いていた、ある種の戦後自民党の病理であり、戦後裏面史であったことは言うまでもありません。
米ソ対立下で共産党からの影響を排除するために野合した不幸な構図という洞察を抜きにして、統一教会問題を語ることはできません。共産党が統一教会にこだわるのも、彼らからすれば、長年クビ元に突き付けられたナイフも同然のこの偽装宗教団体をどうにかしたいからでしょう。
しかし一方で、日本共産党もかつての同志であった指導部がソ連から資金供与を受けてきたにもかかわらず、「あれは共産党ではない」とひろゆきばりに論点をずらしてなかったことにしているのも、また欺瞞です。こうした現状を見るに、政治というのはそういうものなのだなあとつくづく思うわけであります。
そこへ来て、今度はTwitter上で伊藤詩織さんに対する中傷ツイートに「いいね」を25個繰り返し行ったかどで訴えられた杉田水脈さんが、東京地裁での勝訴が一転、高裁敗訴となり55万円のお支払いと相成るという事件がありました。
伊藤詩織さんへの評価がどうであるかはさておき、動画でもニュースでも、彼女が登場するコンテンツに対して寄せられるコメントやツイートには目を覆わんばかりの中傷が並ぶことも一再ならずあり、正直、ネットで意見を並べる人たちの民度について深刻に考えるべきことは多々あるのではないかと思います。