8月2日、HSBCホールディングスは香港で個人株主との会合を開き、アジア事業を分離するより現在の一体的体制の方が有利だと訴えた(写真:ロイター/アフロ)

(譚 璐美:作家)

 現在、HSBCホールディングスの筆頭株主は、中国の四大保険会社のひとつである中国平安保険集団(ピンアン保険グループ)である。

 1988年に設立された中国平安保険は、中国で最も多くの金融ライセンスを持つ企業集団で、2004年に香港証券取引所に上場し、2007年に上海証券取引所に上場するのと同時に、ハンセン指数の構成銘柄入りを果たしている。

 HSBCホールディングスは上場前の2002年、中国国内の金融の覇権を狙って、優良企業である中国平安保険に目を付け、約16.8%の株式を保有して筆頭株主になった。金融業界では、英国の対中戦略を反映した「HSBCによる陰謀」と、秘かに囁かれた。

 だが、その後リーマンショックや経営の失策から、HSBCは中国平安保険の株をタイのコングロマリットに全額売却。現在では逆に、事業規模を拡大した中国平安保険がHSBCの筆頭株主(持ち株比率は8%)になった。いわば「軒を貸して母屋を取られた」格好だ。

*<中国は世界の金融機関を乗っ取るつもりか(上)>はこちら
https://jbpress.ismedia.jp/articles/-/71556

コロナ禍による配当ストップが株主の怒りを買う

 ところで、2022年5月、香港市議会で「HSBCのアジア部門の分離・独立を求める」という議案が提出された。なぜ行政府がメガバンクの運営に口を挟むのかと言えば、コロナウイルスのパンデミックで、英国の金融監督庁(FSA)が配当金の支払い停止を要請したため、香港の株主たちが2020年度の配当金をもらえなかったからだ。