光復節で演説する尹錫悦大統領(写真:代表撮影/ロイター/アフロ)

(田中 美蘭:韓国ライター)

 日本では77年目の終戦記念日、韓国では光復節を迎えた8月15日。韓国におけるこの日は「日本からの解放」を祝う特別な日であり、テレビやラジオは関連番組一色となる。

 また、大統領による演説では日本を絡めたものが主流となる。特に、昨年までは文在寅(ムン・ジェイン)前大統領が反日路線を取っていたため、日本を敵視した演説で、光復節の日も盛り上がりを見せていた。

 だが、文氏が退任し、新たに尹錫悦(ユン・ソンニョル)氏が大統領となった今年は、光復節の光景や雰囲気が一変した。

 今年の光復節は月曜日で、週末からの3連休となった。夏休みも終盤に差し掛かる時期であり、かつ今年は新型コロナの規制が大幅に緩和された夏休みとなったことから観光に繰り出す韓国人も大勢いた。

 事実、この連休はどこに行っても人出で混雑し、道路は渋滞といった光景が見られた。中には連休と光復節が重なったために、「今年は光復節の影が薄い」「うっかり忘れていた」などという声まで聞こえたほどだ。

 韓国では、祝祭日は家の一角に太極旗を掲げることが慣習のようになっている。愛国教育の一貫として、「祝祭日は太極旗を掲揚するように」と学校で指導があったり、アパート(日本のマンションにあたる大型集合住宅)の管理事務所が住民に向けて太極旗の掲揚を促す放送が流されたりする。

 しかし、祝祭日に太極旗を掲揚する国民は、都市部や若い世代を中心に減少しているという。だからこそ、教育現場や町内といったコミュニティでこうしたアナウンスがされているのだろう。

 筆者が住むアパートでは、光復節当日に太極旗を掲揚していた家は目視で一棟につき2、3軒程度だった。韓国が何かにつけて「愛国心が強い」と自負する割には、寂しい光景であった。