8月15日、光復節の記念式典に出席した尹錫悦大統領（写真：代表撮影/ロイター/アフロ）
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（武藤 正敏：元在韓国特命全権大使）

　8月15日は、日本にとっては終戦記念日だが、韓国では日本の植民地支配から脱し、独立を取り戻した「光復節」である。

　その8月15日の光復節の記念式典での演説で、韓国の尹錫悦（ユン・ソンニョル）大統領は今後の日本との関係について、「韓日関係の包括的な未来像を提示した『金大中（キム・デジュン）・小渕共同宣言』を継承し、韓日関係を早期に回復、発展させていく」と述べた。

　さらに尹大統領はこうも述べた。

「かつてわれわれが自由を取り戻し守るために政治的な支配から脱却する対象だった日本は今、世界市民の自由を脅かす挑戦に共に立ち向かい、力を合わせて共に進む隣人」

「韓日関係が普遍的な価値を基盤に両国の未来と時代的な使命を目指して進んでいく時、歴史問題もきちんと解決される」

　尹錫悦大統領の演説は、韓国の大法院（日本の最高裁に相当）が日本企業の資産の売却に関する決定を19日にも行う可能性があると指摘される中、日韓関係に関する大統領の見解を伝える最後の機会として重要な意味を持っていた。

　尹錫悦大統領の演説は、小渕・金大中共同宣言を引用する形で、日本の総理が韓国に対して反省とお詫びを述べたことを特記したうえで、日韓関係を未来志向に向かって進めるべきと訴えたものとして評価すべきだろう。

小渕・金大中共同宣言の意味

　小渕恵三総理と金大中大統領による日韓共同宣言には、こう記されている。

＜小渕総理大臣は、今世紀の日韓両国関係を回顧し、我が国が過去の一時期韓国国民に対し植民地支配により多大の損害と苦痛を与えたという歴史的事実を謙虚に受けとめ、これに対し、痛切な反省と心からのお詫びを述べた。

　金大中大統領は、かかる小渕総理大臣の歴史認識の表明を真摯に受けとめ、これを評価すると同時に、両国が過去の不幸な歴史を乗り越えて和解と善隣友好協力に基づいた未来志向的な関係を発展させるためにお互いに努力することが時代の要請である旨表明した＞