ライバル大学の有名選手にヘッドハントも

 テキサス州出身の全米ナンバーワンの呼び声が高かったクォーターバックは高校時代にお茶メーカーのCMのオファーを獲得、そしてスポーツ関連の広告会社と140万ドル(約2億円)にのぼる契約を交わしたと報じられた。
 

テキサス州出身の有名クォーターバックが高校時代にオファーを得て出演したお茶メーカーのCM動画

 また、NILの解禁に伴い、NILコレクティブと呼ばれる、NILを管理する団体が現れた。NILコレクティブは、ブースターという各チームを支援する団体や個人、地元の企業などから資金を調達、アスリートのブランドイメージの向上などを支援する団体である。

 カリフォルニア州南部の有名な高校生クォーターバックは、テネシー大学への入学を条件として、NILコレクティブから最初の3年間に計800万ドル(約11億円)の収入を約束されたと報じられている。

 このようにダムが決壊したように多額の金が流れ始め、大学スポーツはまさに「ワイルド・ワイルド・ウエスト」(未開拓時代の米国西部地域のように、無法地帯を指す)の状況となっている。それでも現時点ではNILのマネタイズの流れを規制するような動きは見られない。

 NCAAは他の大学にスポーツ選手が移る際の規制も2020年に緩和したため、たとえば、ライバルの大学が有名選手にNILの話を持ちかけて、ヘッドハントするような動きも出ている。NCAAが守り続けた「アマチュア精神」は消滅したと言って過言ではない。

 NILの解放による影響はさらに広がっている。

 大学による高校選手のリクルーティングも様変わりした。大学のチームは有望な高校選手を発掘し、熱烈にリクルートする。これまで高校選手は、子供の頃から応援してきた大学に行く、あるいは、将来的にプロチームを目指すために自身の技術を磨いてくれて、全米で優勝できそうな名門チームを選ぶ、といったケースが多かった。