遠目には、少女がおしゃれなクラッチ・バッグを片手に散歩しているように見えたのです。それで近づいたら、バッグではなくて猫でした。家から出ない猫なので、小脇に抱えて散歩するのが日課になっているとのことでした。
家の庭で、子犬と遊んでいる少年たちと出会いました。「子犬が好きなのね、可愛いものね」。そんな風に話しかけると、ガイドさんが「おもちゃにしているわけではないですけど、他に遊ぶものがないんですよ。男の子は子犬、女の子は子猫を、遊び相手にしています」と教えてくれました。
ブータンは、独自の文化、風習を守るため約50年前まで鎖国政策をとっていました。その後もテレビ衛星放送やインターネットの規制が続きました。一般市民にコンピュータゲームやインターネットが解禁されたのは、現国王即位後のことです。
新聞と果物を売る店の前に、キジ猫を小脇に抱えている子がいました。写真を撮りたいのですがいいですか、とお父さんに聞くと、「懐にしまっている猫も見せてあげなさい」と、お父さんは耳打ちしました。懐からもう一匹が出てきた瞬間の写真です。
男の子なのに、遊び相手は猫なんですね。ガイドさんから聞いたことを受け売りで言ったところ、「ははっ。女の子だよ。わたしと同じ服装じゃなきゃ嫌だというから「ゴ」を着せているんだ。男の子と間違われても、「ゴ」がいいんだってさ」。
ちなみに、女性の服装は「キラ」と言います。服装は男の子だけれど、女の子だから遊び相手は猫なのですね。