医療崩壊は、2022年の医療水準が整っていれば、本来失われなくてもよいはずの命が脅かされてしまうことが最大の問題です。
感染者数は「等比級数的」ないし「指数的」つまり「掛け算」で増えていきますが、医療体制は病床一つひとつ、医療従事者一人ひとり、「足し算/引き算」でしか変化できません。
代理店行政的にはインバウンド振興など様々な思惑があろうと察せられますが、こうした原理的なリスクは変えられません。慎重に推移を検討する必要があります。
リスク3:オミクロン後遺症の見えない影響
多くの読者は既にご存じと思いますが、私自身、また私が責任を持つ東京大学ゲノムAI生命倫理研究コアとして、東京都世田谷区の新型コロナウイルス感染症・後遺症調査の解析を担当しています。
2021年春までの罹患を対象とする第一回調査(https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20210907b.html)、それ以降2021年秋までを対象とする第二回調査(https://www.nhk.or.jp/shutoken/newsup/20220411c.html)は、各々世界でも稀な「全数調査」として自治体主導で行われた貴重な基礎的貢献といえます。
その結果はNHKなどマスメディアでも広く報じられ、大きな反響をいただきました。
しかし2022年1月からのオミクロン爆発以降は、感染者数が比較にならないほど多く、全数調査を1自治体である世田谷区だけで行う、資金的ならびに人的資源が整っているとは言えない状況にあります。
このため、確かなデータに基づいた「オミクロン後遺症」の実態を把握することがいまだ難しい状況にあります。
ただ、全体的には「倦怠感」「咳」などの後遺症はデルタ株以前同様続くのに対して「味覚異常」「嗅覚異常」などは減っているらしい、との傾向が察せられます。
最も深刻なのは、海外で特徴的と指摘される「ブレイン・フォグ」、つまり頭に霧がかかったように意識や思考がぼやけ、仕事や、児童生徒であれば学習などに障害が発生する状況でしょう。
これについては、診断も根本的な対策も確立されておらず、いまだ被害実態が明らかではありません。
新型コロナを「風邪」などと軽視することは、病理に照らして本質的に誤りと指摘する必要があります。
コロナウイルスは、感染した細胞を破壊してします。
人間の細胞は、一部の例外を除いて一度壊れてしまうとトカゲのしっぽのように再生はしませんので、不可逆のダメージを受けかねません。
コロナは極力、感染らない方がよい病気、またもし感染した場合には軽症で完治させるべき疾病であるという本質は、微動だにしません。
7月16日に未曾有のエリアに突入した日本のコロナ禍、毎週の感染状況から最新の被害規模をフットワークよく算定し、とりわけリスクの高いエリアには集中的なサポートを準備して、トータルの被害を最小に食い止める努力がなされる必要があるでしょう。