廃炉に向けて作業が進む福島第一原発(3月3日撮影、写真:AP/アフロ)

 7月14日と言えば、世界史的にはフランス革命の口火を切った「バスティーユ牢獄襲撃事件」の日付、あるいは「パリ祭」として記憶されます。

 しかし、2022年7月14日、日本経済新聞の第1面に載ったのは「東電旧経営陣に<13兆円>賠償命令」(https://www.nikkei.com/article/DGXZQODL137KH0T10C22A7000000/)という衝撃的な見出しでした。

 2011年東日本大震災発生時点での東京電力旧経営陣が「巨大津波の来襲を事前に予測でき」「浸水対策などの事故防止対策を、やはり事前に講じることが可能であったか」を巡って、旧経営陣5人に対する22兆円の支払いを求めた東電株主代表訴訟第1審に対して、東電の旧経営陣に極めて厳しい判決が下されました。

 東京地方裁判所総括判事の朝倉佳秀裁判長(54)は、2002年に政府機関が取りまとめた長期評価に基づく15.7メートル津波試算を「相応の科学的信頼性を有する知見」と認めたうえで、必要な津波対策を怠り「安全意識や責任感が根本から欠如していたと言わざるを得ない」と厳しく指弾。

 事故発生時の経営陣4人に対して、13兆3210億円の賠償を命じました。

 ちなみに2022年度の我が国予算案は過去最高の107兆5964億円、国家予算の12.4%ほどの賠償金額の支払が4人の「個人」に対して命じられています。

 仮に頭割りにすれば1人当たり国家予算の3.1% 3兆3300億円ほどの支払い額、この1万分の1に相当する3億3300万円の賠償だって、普通の個人には現実的ではありません。

「無過失・無限責任」の原賠法

 株主代表訴訟での賠償額として「13兆円」は桁外れに巨額です。過去の判例としては、1995年に発覚した大和銀行ニューヨーク支店の巨額損失事件をめぐる株主代表訴訟が最大規模のケースとして知られます。

 元副頭取らを相手取って1550億円余の支払いを求めたのに対し、829億円ほどの支払を命じた「大和銀行株主代表訴訟」(https://www.eiko.gr.jp/law/%E5%A4%A7%E5%92%8C%E9%8A%80%E8%A1%8C%E6%A0%AA%E4%B8%BB%E4%BB%A3%E8%A1%A8%E8%A8%B4%E8%A8%9F-4/)です。

 それにしたって今回の東電株主代表訴訟と比較すれば1%にも手が届かない、コンパクトな判例になっています。

 なぜここまで巨額の賠償命令となったか。