今の時代、テレビに出て宣伝することは、仕方ないことかもしれない。かれらがそのことをどう思っているのかはわからないが、諸般の事情から、宣伝を断るわけにはいかないのだろう。宣伝のためにハリウッド俳優だって来日したりしているのだから。悪の元凶はテレビのバラエティ番組だが、タレントや俳優たちを責めてもしかたがないのだろう。

もはやDVDは少数派だが

 わたしにとっては、いまや日本映画は風前の灯のように見える。しかしそれにしては、日本映画は続々作られているようである。その多くが、わたしの知らない監督と若い出演者たちによって作られている映画である。思うに、それらの映画に共通する動機と、出演者の資格は、「かわいい」「カッコいい」「おもしろいこと」の三つではないか。これは映画の価値観に限定されない。現在の日本の社会全体の根底にある価値観になっているのではないかと思われる。

 わたしの価値観はたぶん古くさいのだろう。わたしみたいな観客(視聴者?)は、ほとんどの日本映画から呼ばれていない。つまり必要とされていない。『君の名は。』などのアニメ映画からも、『翔んで埼玉』といったギャグ映画からも、呼ばれてはいないのである。しかしいまさら時代に合わせて、自分の価値観を修正するつもりはない。

 映画館に出向くことがなくなった。半年もたてばDVDになることがわかっているからである。それまで待てずに、いま見たいのだという映画が少ない(わたしが映画館で一番最後に見たのは『虎狼の血』だ)。

 それに現在ではネット配信動画(ネットフリックスやアマゾンプライムなど)で映画を見る人が87%もいるらしく、DVDで見ている人間はわずか13%だという。わたしはいつの間にか少数派に転落していたのである。知らなかったなあ。どのくらい先になるかはわからないが、いずれ映画館もTSUTAYAレンタルも消滅するだろう。だが、わたしは最後までDVDのファンである。

 漫画の原作をわたしはあまり好まないが、『アルキメデスの大戦』や『ザ・ファブル 殺さない殺し屋』(テレビドラマでは『JIN―仁』)などの傑作を見ると、一概に決めつけるのではなく、個々の作品で判断するよりほかはない。

 今週末(6月17日)には、河井継之助を描いた大作『峠 最後のサムライ』(小泉堯史監督、役所広司主演)が公開になる。いまさら河井継之助か、という既視感はあるものの、一応期待している(映画館に行くかどうかは未定)。7月下旬には岡田准一主演の『燃えよ剣』(原田眞人監督)のDVDが出る。とりあえず楽しみである。

『定年後に見たい映画130本』(勢古浩爾著、平凡社新書)