反原発派と再エネ派を利用した経産省
なぜ再エネ派は原発再稼働に反対し、ぎりぎりの電力運用を求めるのか。その1つの理由は、彼らの中に反原発派が多いからだが、それだけではない。最大の理由は、原発が動くと再エネが送電線にただ乗りできなくなるからだ。
送電線は電力会社が建設した私有財産だが、今は原発が動かせない電力会社の送電線を再エネ業者が使っている。しかし原発が再稼働すると、電力会社の送電が優先なので、再エネ業者は自前の送電線を建設しなければならない。だから「安全性」を理由にして反対しているのだ。
それを利用したのが経産省である。電力自由化は、電力会社の設備投資を効率化して電気料金を下げるために競争させる改革である。これは通信自由化のあと、インフラ産業を効率化する制度改革として、1990年代から英米をはじめとする先進国で行われた。
その最大のポイントは発電と送電の分離である。送電網には規模の経済があるので、各家庭に2本以上の送電線をつくる必要はないが、発電所は小規模でもできるので、両者を分離するのが電力自由化の最大のメリットだった。
これには地域独占だった電力会社が反対するが、役所としては権限を拡大する絶好のチャンスだった。しかし通信で資金力にまさるNTTが郵政省より強い政治力を持っていたように、東電の政治力は経産省より強かった。
2000年代には経産省の村田成二事務次官と東電の勝俣恒久社長の戦いが繰り広げられたが、結果的には東電の勝利に終わり、発送電分離はできなかった。