2022年「台湾国際コンピュータ見本市」の開会式に出席した台湾の蔡英文総統(資料写真、2022年5月24日、写真:ロイター/アフロ)

(姫田 小夏:ジャーナリスト)

 台湾では今年(2022年)3月末から、新型コロナウイルスの感染拡大に改めて警戒が高まっていた。4月末には1日当たりの新たな市中感染者が初めて1万人を超え、5月27日には9万4808人に達した。その後、新規感染者数は下落傾向にあるが、感染拡大を許してしまった蔡英文政権は批判を浴びている。

感染拡大の原因の1つは入国制限の緩和

 今から1年前の2021年5月19日、台湾当局はコロナ感染症について、4段階ある警戒レベル(「4」が最も厳格)を全県市で「警戒レベル3」に引き上げた。厳しい警戒措置はおよそ2カ月続いたが、8月にはほぼ正常な日常生活を取り戻していた。

 2022年に入り、当局は隔離規制を徐々に緩和し、1月末~2月上旬にかけての春節は海外からも家族や親戚が帰省し、観光や飲食など外出を楽しんだ。ところが、3月末~4月にかけてオミクロン株の感染者が爆発的に増加してしまう。

 中国・上海のようなロックダウンこそないものの、5月下旬の時点で「街には人影がなくなった」(台北市に住む陳慧文さん、仮名)。住民が感染を恐れて外に出なくなったのだ。